tend Editorial Team

2026.08.10(Mon)

「泣くなら、もう帰るよ」公園で転んだ子供に響いた母親の声。通りすがりの私が忘れられなかった理由

「泣くなら、もう帰るよ」公園で転んだ子供に響いた母親の声。通りすがりの私が忘れられなかった理由

公園から聞こえてきた泣き声

その日、私は買い物を終え、近所の公園を通って家へ帰るところでした。

広場の近くまで来たとき、遊具のほうから幼い子どもの泣き声が聞こえてきました。

見ると、小さな子が地面にしゃがみ込んでいます。どうやら遊んでいる途中で転んでしまったようでした。

すぐそばには、母親らしき女性が立っていました。

「痛かった…」

子どもは涙を流しながら、母親のほうへ手を伸ばしています。

すると女性は、少し疲れたような表情で言いました。

「泣くなら、もう帰るよ」

思った以上に強い声だったので、私は思わず足を止めてしまいました。

「立って。もう大丈夫だから」

女性がそう促しても、子どもはなかなか立ち上がれません。

近くのベンチにいた人たちも、一瞬だけそちらを見ていましたが、すぐに視線を戻していました。

その一言だけが耳に残った

「そんなことで、ずっと泣かないの」

女性はもう一度そう言いました。

子どもは泣くのを我慢しようとしているのか、しゃくり上げながら母親の手を握りました。

私はその様子を見ながら、少し胸が苦しくなりました。

転んだ直後くらい、もう少し優しく声をかけてもいいのではないか。そんな考えが頭をよぎったのです。

ただ、すぐに「自分には見えていない事情もある」とも思いました。

私は、たまたま数分間その親子を見かけただけです。その日、母親が朝からどんな時間を過ごしてきたのかも、子どもとの間にどんなやり取りがあったのかも知りません。

何度言っても帰ろうとしなかったのかもしれないし、母親自身も疲れ切っていたのかもしれません。

しばらくすると、女性は子どもの手を取りました。

「ほら、帰ろう」

子どもはまだ遊具が気になるようで、何度か後ろを振り返りながら歩いていきました。

私はその親子を追いかけることも、声をかけることもできず、そのまま公園をあとにしました。

子育てをしていれば、いつでも穏やかにいられるわけではないのだと思います。それでも、あの日耳にした強い声と、泣くのをこらえながら歩いていた小さな後ろ姿は、しばらく頭から離れませんでした。

ほんの数分の出来事だったからこそ、あの親子が家に帰ったあとには、いつもの穏やかな時間に戻っていてほしいと思いました。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.08.10(Mon)

「ここ、私たちが先に立っていました」運動会の最前列へ突然入り込んだ保護者。何も言えず飲み込んだ私の本音
tend Editorial Team

NEW 2026.08.10(Mon)

「おばあちゃん、まだ来ないの?」義母の予定変更に振り回された私。だが、親戚の一言に救われたワケ
tend Editorial Team

NEW 2026.08.10(Mon)

「毎年、届けに行ってるんですか?」お年玉を祖母に届けさせるのが当たり前な義姉夫婦。話を聞いた私が感じた違和感とは
tend Editorial Team

RECOMMEND

2026.06.01(Mon)

「顔はAIで合成したんだ」マッチング写真と別人の男→子供が3人いるにも関わらず、提案してきた内容に絶句
tend Editorial Team

2026.06.24(Wed)

高市内閣が別枠予算で地方の産業集積を図る「地域未来戦略」の概要案を示す→「大切な政策だと思います」とSNSでは期待の声も
tend Editorial Team

2025.12.03(Wed)

「その結婚指輪、安物よね」と笑う同僚。だが、私の正論で黙り込んだスカッとした話【短編小説】
tend Editorial Team