「早く顔を見せてちょうだい。初孫なんだから」と催促する義母→私がどうしても連れて行きたくなかった理由とは
初孫を待つ義母
子どもが生まれてから、義母の電話は急に増えた。
「早く顔を見せてちょうだい。初孫なんだから」
声は弾んでいた。心待ちにしてくれているのは、痛いほど伝わってくる。それでも私は、すぐに「はい」とは答えられなかった。
夫の実家には、どうしても連れて行けない理由があったからだ。
外で飼っている犬を、夜はそのまま家の中に上げて放し飼いにしている。
台所まわりも整っているとは言いがたく、出される食器も気になることが多かった。生まれたばかりの子を、その環境に置くことは私にはできなかった。
結婚してからずっと、その家に通うたびに私は身を硬くしていた。料理を残すのも申し訳なくて、無理をして口に運ぶ。
帰り道、夫にだけは正直な気持ちをこぼしていた。
「気にしすぎかもしれないけど、どうしても落ち着かないの」
夫は私を責めなかった。むしろ、自分の実家のことなのにと、申し訳なさそうにしていた。
変わらない実家
夫は、私の気持ちを汲んで実家に何度も掛け合ってくれた。
「犬だけでも、子どもが来るときは別にできない?」
「あら、この子だって家族なのよ。今さらかわいそうじゃない」
義母にそう返されると、話はそこで止まってしまう。改善される気配はないまま、月日だけが過ぎていった。
そのうち、訪問の足は自然と遠のいた。
「無理して連れて行って、もし何かあったら」
夫にそう打ち明けると、彼は静かにうなずいた。守りたい気持ちは、二人とも同じだった。
その間も、催促の電話は止まらなかった。
「孫を一度も連れてこないなんて」
受話器の向こうで、義母の声が湿っていた。初孫を抱けない寂しさは、きっと本物だ。
それでも、私は譲れなかった。いつまでも夫の後ろに隠れて、夫に言わせ続けるのも違う気がした。
線を引いた日
次に義母から電話が来たとき、私は自分で受話器を取った。
「家に犬が放し飼いでは無理です」
はっきりそう告げると、義母は息を呑んだ。
「……だって、ずっとこうしてきたのよ」
「ずっとそうでも、この子にとっては初めての場所です。守れるのは私だけなので」
義母はしばらく黙り込み、それから何度か言葉を探すように口を開いては、やめた。最後は小さな声で「……わかったわ」とだけ言った。電話を切ったあと、私の手はまだ少し震えていた。
その日を境に、無理な打診はぴたりと止まった。代わりに、会うときは外の店や公園で、と私から提案するようにした。義母もそれには素直に応じてくれる。
嫌われる覚悟で言った一言だったけれど、引いた線は思いのほか、互いを楽にしてくれた。あの食卓で身を硬くしていた頃の自分には、もう戻らなくていい。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














