「初孫なんだもの、早く顔を見せてよ」と催促する義両親→どうしても子供を連れて行きたくなかったワケ
出した条件
子が生まれてから、妻の実家からの電話が増えた。
「初孫なんだもの、早く顔を見せてよ」
義母の声は、いつも嬉しそうだ。それでも私の足が重かったのには、理由があった。
妻の実家は、訪ねるたびに床にゴミが散らかっていた。脱いだ服、空き袋、つまようじ。大人なら気にもしないものが、這い始めた赤ん坊には命取りになりかねない。
だから私は、訪問の前にひとつだけお願いをした。
「衛生のこともあるので、行く前に家を片付けてもらえますか」
「わかったわ。孫のためだもの、きれいにしておくから」
義母は気持ちよく承諾してくれた。それを信じて、私たちは訪問の日を待った。
机の上だけ
子が一歳を過ぎたころ、片付いたという連絡が来て、私たちは久しぶりに玄関をくぐった。
机の上は、たしかに片付いていた。だが床に目をやった瞬間、私は息をのんだ。以前と変わらず、ゴミが散らばったままだったのだ。
少し目を離した隙に、抱っこを代わってもらった義母が、子を散らかった床にそのまま下ろした。
振り向くと、子は床のつまようじを拾い上げ、まさに口へ入れようとしている。
「待って!」
私は飛びつくように子を抱え上げ、その手から先の尖ったものを取り上げた。背中に冷たい汗が伝った。
「ちょっと床に下ろしただけよ」
義母はそう言って、何が悪いのかわからないという顔をしている。その軽さこそが、私にはいちばん怖かった。
主導権はこちらに
私は子をしっかり抱え直し、声を荒らげないよう気をつけながら、それでもはっきりと言った。
「片付けてもらえないなら連れては来られません」
義母は、笑顔のまま固まった。
「えっ……そこまで言わなくても」
反論しかけて、足元に転がるゴミに気づいたのだろう。声がだんだん小さくなり、最後は黙ってしまった。義父も、決まり悪そうに横を向く。
「孫に会いたい気持ちは、ありがたいです。でもまず、床を片付けてください」
居間は、しんと静まり返った。隣で妻が、ほっとしたように私の背に手を置く。
「私からも、ずっと言いたかったことなの」
その日は早々に切り上げ、子を抱いて帰路についた。
以来、義両親からは何度も来てほしいと連絡が来る。けれど、答えは決めてある。
「床がきれいになったら、すぐ連れて行きます」
そう伝えると、向こうは毎回口をつぐむ。あんなに軽く考えていた義母が、今では電話のたびに「ここまで片付けた」と報告してくるようになった。立場は、いつのまにか入れ替わっていた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














