「母さんの前ではいい息子でいたい」と私をないがしろにする夫。だが、実家での質問に言葉を失った
外面だけはいい夫
「外面だけはいいんだから」私は何度、心の中でそうつぶやいたか分からない。
義実家へ行くと、夫は人が変わる。玄関に着くなり母親の荷物を抱え、食後には誰よりも早く席を立って洗い物を買って出る。
義母はそのたびに、我が子を見上げて目を細めた。
「本当に優しい子」
義母は苦労を重ねてきた人だ。その母を思いやる夫の気持ちを、私も否定するつもりはない。
ただ、その姿を横で見るたびに、胸の奥がちくりとした。
けれど家の夫は、ソファから動かない。「お茶」「ティッシュ」と口だけは達者で、脱いだ服も食器も置きっぱなし。
使い終えた皿は、いつも私が黙って片づけていた。
「たまには自分でやってよ」そう言っても、「はいはい」と生返事が返るだけ。
義実家からの帰り道、私はなぜ家では動かないのかと尋ねた。
すると夫は、あっけらかんと答えた。
「母さんの前ではいい息子でいたい」
悪気はないのだろう。だからこそ、余計にやりきれなかった。
実家でやんわり仕返し
数日後、私たちは私の実家を訪ねた。
母がお盆にお茶を並べて運んできても、夫は座ったまま「どうも」と礼を言うだけ。義実家でのあのきびきびした姿は、どこにも見当たらなかった。
私はにっこり笑って、母に打ち明けるふりをした。
「この人、お義母さんの家だと別人みたいに働くのよ。お皿洗いも荷物持ちも全部」
夫の肩が、びくりと跳ねた。母は湯呑みを置きながら、楽しそうに言葉を継ぐ。
「あら、素敵。じゃあここでも見せてもらおうかな」
逃げ場を失った夫は、視線を落として黙り込んだ。
頬が赤い。「いや、その……」と口ごもるばかりで、言葉が続かない。
助けを求めるように私を見たが、私はにこりと笑い返すだけだった。
私はとどめとばかりに、静かに問いかけた。
「じゃあ私とか母は他人?」
夫は大きく息を吐き、「……ごめん。家でもやるよ」と観念したように頭を下げた。そして立ち上がり、母の湯呑みを下げにキッチンへ向かう。
その背中を見て、母がこっそり私にウインクをよこした。
あの日を境に、夫は少しずつ家でも動くようになった。
食後に食器を運んだり、「手伝うことある?」と声をかけてくれたり。たったそれだけのことで、家の空気は驚くほど軽くなった。
母の前でうろたえ、初めて逃げ場をなくした夫の顔を、私はきっとずっと忘れない。義母だけでなく、毎日隣にいる私にも同じ顔を向けてくれる。それだけで十分だった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














