「たかが生活音で神経質ね」引っ越し先で感じた騒音。だが、貼り紙を無視した住人が黙ったワケ
数日で戻った足音
引っ越して半年が過ぎた頃、真上の部屋から響く足音に悩まされるようになった。夜遅くなっても、床を叩くような音や物を落とす音が止まらない。
睡眠不足が続き、たまらず管理会社へ相談した。ほどなく共用部に注意の貼り紙が掲示され、上階は数日だけ静かになった。
けれど、それも長くは続かなかった。貼り紙の効き目が切れたように、また深夜の足音が戻ってきた。天井を見上げてため息をつく夜が、また始まったのだ。
神経質と言われて
思い切って、直接お願いしてみようと上階を訪ねた。ドアを開けた住人は、私の顔を見るなり眉をひそめた。
「たかが生活音で神経質ね」
その一言で、話し合う気などないのだと分かった。子どもがいるから仕方ない、マンションなんだから我慢しろと一方的にまくし立てられ、扉は閉められた。
謝るどころか、こちらが心の狭い人間のように扱われた。悔しさより先に、この人には言葉が通じないのだと悟った。
玄関先で頭を下げた自分が、なんだか惨めに思えてくる。
それでも引っ越しはすぐにはできない。子どもの保育園も、私の通勤も、この場所を離れれば全部やり直しになる。逃げるのではなく、ここで解決するしかなかった。
記録という武器
感情でぶつかっても無駄なら、事実で動かすしかない。私はその日から、足音がした日付と時刻を一件ずつ書き留めた。特にひどい夜は、スマートフォンで音そのものを残した。
何時に、どんな音が、どれくらい続いたか。地味な作業だったけれど、書き溜めるほどに気持ちは落ち着いていった。一か月ほど続けると、ノートは日時でびっしり埋まった。私はそれを手に、もう一度管理会社の窓口に立った。
「毎晩の足音、記録が全部あります」
担当者はメモと録音を確認し、顔つきを変えた。「ここまで具体的だと、こちらも強く言えます」と、その場で該当の部屋への個別注意を約束してくれた。防音マットの設置まで求めてくれるという。感情に任せて怒鳴り込むより、静かに積み上げた記録のほうが、よほど相手を動かす力を持っていた。
それから数日後、ゴミ捨て場で上階の住人と鉢合わせた。相手は私を見ると、一瞬だけ体をこわばらせ、さっと視線を逸らした。以前のように食ってかかる気配は、もうない。
「夜は……気をつけますので」
ぼそりとそう言って、足早に立ち去っていった。あれほど響いていた足音は、その日を境に聞こえなくなった。
一人で抱え込まず、記録を残して正しい順に動く。それがいちばんの近道だった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














