「合鍵よ、何か問題ある?」合鍵で勝手に家に入った義母。家での振る舞いに思わず絶句
私が知らなかった合鍵
その日、私は洗濯物を畳んでいた。
玄関で、金属の擦れる音がした。続いて鍵が回り、扉の開く音。夫は風呂掃除の途中で、家には二人しかいないはずだった。
「あら、いたのね」
義母が、当たり前のような顔で廊下に立っていた。
「お義母さん、その鍵…」
「合鍵よ、何か問題ある?」
悪びれる様子はまるでなかった。引っ越しの時に夫が渡した合鍵を、義母はずっと持っていたのだ。私はその存在を、この瞬間まで知らなかった。
義母は家を見て回った。
「洗剤はこっちの棚にまとめなさい。これじゃ動線が悪いわ」
「窓のサッシ、いつ拭いたの」
家のことは全部自分のやり方が正しい。義母はそういう人だった。
畳みかけの洗濯物にまで手を伸ばし、義母は端から並べ直していく。
「タオルは三つ折り。うちはずっとこうなの」
「今、途中だったので…」
「いいのよ。私がやるから」
やめてください、の一言が喉で止まった。夫を呼びたかったが、浴室からはシャワーの音が響いていた。
夫が引いた一本の線
義母が最後に立ち止まったのは、台所だった。
火にかけていた味噌汁の鍋を、断りもなく開ける。お玉ですくって口に運び、眉を寄せた。
「やっぱりね。あなたの料理は味が薄いのよ。私が作ってあげる」
「今、支度の途中なので…」
「いいから。あなたは向こうにいて」
エプロンまで勝手に手に取り、義母は冷蔵庫を開けた。私の家の台所が、私の知らない手つきで動いていく。
そこへ、夫が入ってきた。
「母さん、その鍋から手を離して」
義母がぽかんと振り返る。
「あなた、何よ急に」
「勝手に上がり込んで、台所まで使うのはやめてくれ。合鍵は返して」
義母の顔から、余裕がすっと消えた。
「家族じゃないの。他人行儀なことを言わないで」
「家族でも、ここは俺たちの家だ」
夫は一歩も引かなかった。義母は私に向かって口を開きかけたが、私はまっすぐ見返した。
「私も、同じ気持ちです」
義母はお玉を静かにシンクへ戻した。それから何か言おうとして、結局、言葉にならない。
バッグから鍵を取り出し、テーブルの端に置いた。
「……気を使わせて、悪かったわね」
その声には、さっきまでの張りがなかった。義母はエプロンを畳んで椅子に掛け、玄関へ向かう。振り返らずに出ていった。
あの日から、義母が突然現れることはなくなった。来る時は必ず前もって電話が入る。玄関のチャイムを鳴らして、こちらが出るまで外で待つようになった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














