「お昼に食べればいいよね」朝食バイキングの料理を容器に詰めた客。だが、スタッフが告げた正論で状況が一変
朝食会場で気になった家族
昨年、夫婦で温泉旅館に宿泊したときのことです。
翌朝の7時半ごろ、私たちは一階にある朝食会場へ向かいました。会場はバイキング形式で、窓側に料理台が並び、その向かいに宿泊客用のテーブルが配置されていました。
私たちが案内されたのは、料理台から少し離れた中央付近の席です。
二つほど隣のテーブルには、夫婦と小学生くらいの子ども二人が座っていました。
しばらくすると、子どもたちは唐揚げやフライドポテトを何度も取りに行くようになりました。
最初の皿にまだ料理が残っているのに、新しい料理を追加していきます。テーブルの上には、食べかけの唐揚げやパンが少しずつ残っていました。
母親は何度か、
「食べられる分だけにしなさい」
と声をかけていましたが、子どもたちはあまり気にしていない様子でした。
私は少し気になったものの、離れた席のことでもあり、そのまま自分たちの食事を続けていました。
バッグから取り出した保存容器
食事を始めて30分ほどたったころ、その家族はそろそろ席を立つ準備を始めました。
父親が子どもたちを洗面所へ連れていくと、母親だけがテーブルに残りました。
そのとき、母親は椅子の横に置いていたバッグから、小さな保存容器を取り出したのです。
そして、テーブルに残っていたパンやゆで卵を容器へ入れ始めました。
「捨てるのはもったいないし、お昼に食べればいいよね」
独り言のような小さな声でしたが、近くに座っていた私には聞こえました。
子どもが取ってきた料理を無駄にしたくない気持ちは分かります。ただ、朝食会場の料理を外へ持ち出してよいのか、少し気になりました。
母親が容器のふたを閉めようとしたところで、近くのテーブルを片づけていたスタッフが、その様子に気づきました。
スタッフはすぐに大きな声を出すことはせず、母親の席の横まで歩いていきました。
「お客様、お食事中に申し訳ございません」
母親が顔を上げると、スタッフは周囲に聞こえない程度の声で続けました。
「衛生管理の都合により、朝食会場のお料理はお持ち帰りいただけないことになっております」
責めるような言い方ではなく、旅館の決まりを説明する落ち着いた口調でした。
母親は一瞬驚いた表情を見せましたが、すぐに容器から手を離しました。
「そうなんですね。すみません、知りませんでした」
スタッフは、
「恐れ入りますが、お料理はこちらの会場内でお召し上がりください」
と伝え、軽く頭を下げました。
母親は容器をバッグへ戻し、詰めようとしていた料理は自分たちのテーブルの皿に残しました。
その後、洗面所から戻ってきた家族と一緒に、何事もなかったように会場を出ていきました。
スタッフも必要以上に注意を続けることはなく、家族が退席したあとに残った皿を静かに片づけていました。
宿泊施設のバイキングでは、持ち出した料理の保存状態まで施設側が管理することはできません。
事情を知らずに持ち帰ろうとする人もいるのかもしれませんが、周囲の注目を集めないように伝えていたスタッフの対応が印象に残った出来事です。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














