「3時間ですか。もう少し早く帰るのは難しいですか?」同僚の誤った対応。困った客に、隣の私が提案した方法
「3時間ですか」と、同僚の手が止まった
真夏のケーキ屋で働いていたころのことです。
暑い日は、ケーキを持ち帰る時間をいつも以上に気にしていました。保冷剤だけで対応できる時間には限りがあるため、長時間になる場合は、保冷バッグなど別の方法も案内していたのです。
その日も店内には会計を待つお客様が何組か並んでいました。私は隣で箱を組みながら、同僚が年配の女性の会計をするのを聞いていました。
「お持ち帰りは、どのくらいかかりますか?」
「そうねえ……家に着くまで3時間くらいかしら」
女性がそう答えると、同僚の手が一瞬止まりました。
店で用意している保冷剤だけでは足りません。後ろにはまだお客様が並んでいて、同僚も焦っていたのだと思います。
「3時間ですか。もう少し早く帰るのは難しいですか?」
女性は少し困った顔をしました。
「電車を乗り継ぐからねえ。急いでも、それくらいかかるのよ」
同僚も責めるつもりはなかったのでしょう。ただ、「どうしたら持ち帰れるか」より先に「時間を短くできないか」と聞かれたことで、女性も返事に困っているように見えました。
できない話ではなく、できる方法を先に伝えた
私は箱を置き、レジの横から声をかけました。
「3時間くらいでしたら、こちらも一緒にご案内できますよ」
そう言って、店で用意していた保冷バッグの案内を女性の前に置きました。
「保冷剤は2時間分までお入れしています。それを超える場合は、こういうバッグを使っていただく方法があります」
女性は案内をのぞき込みました。
「あら、そういうのがあるのね」
「はい。できるだけ日の当たらないところに置いて、着いたらすぐ冷蔵庫に入れていただければと思います」
「それなら安心ね。じゃあ、これもお願いしようかしら」
先ほどまで少し戸惑っていた表情がやわらいだので、私もほっとしました。
特別なことをしたわけではありません。できない理由から話すのではなく、まず選べる方法を伝えただけでした。
次の週、同僚の言い方が少し変わっていた
その場で、私は同僚に何も言いませんでした。
忙しいときに言葉を選び損ねることは、私にもあります。お客様の前で注意するより、次にどう案内すればいいのかを見てもらえれば十分だと思ったのです。
それから一週間ほどたった日、同僚が別のお客様を接客していました。
「お持ち帰り、2時間を少し超えそうなんですね」
少し考えてから、同僚は続けました。
「でしたら、保冷バッグもあります。よければこちらも見てみますか?」
お客様は「じゃあ、お願いします」とうなずいていました。
その声を聞いて、私は少しうれしくなりました。
あの日、直接注意しなかったことが正解だったのかは分かりません。それでも、同僚が次のお客様には「難しいこと」ではなく「できる方法」から話しているのを見て、接客の言葉はこうして少しずつ変わっていくのかもしれないと思いました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














