「順番なんて気にしなくていいのよ」墓参りの作法に戸惑う私。だが、義母の一言で力が抜けたワケ
電話は、いつも用件だけだった
義母は遠く離れた土地に暮らしていて、顔を合わせるのは年に何度かだけでした。そのかわり、毎年決まった時期になると電話がかかってきます。
「じゃが芋と餅とみかん、順番に送るからね」
「ありがとうございます」と返しても、義母は「じゃあね」と言ってすぐに電話を切ってしまいます。近況を聞かれることもなく、長話になることもありません。
数日すると、大きな段ボールが届きました。じゃが芋は新聞紙に包まれ、年末には餅、そのあとにはみかん。きれいに飾った贈り物ではありませんが、箱を開けるとその季節の食べ物がぎっしり入っていました。
最初のころ、私は義母のそんな素っ気なさをどう受け取ればいいのか分かりませんでした。
義母はもともと口数が多い人ではありません。それでも結婚したばかりの私は、「義実家には義実家のやり方があるはず」と必要以上に緊張していました。
義実家へ行く前には、お墓参りの作法まで調べたことがあります。順番を間違えたら失礼になるのではないかと、一人で気にしていたのです。
「そんなに気にしなくていいのよ」
ある日、夫と義母と一緒にお墓参りをしたときのことです。
線香に火をつけたものの、誰から供えるのか分からなくなり、私はその場で手を止めてしまいました。
すると義母が、私の手元を見て笑いました。
「あら、そんなに気にしなくていいのよ。順番なんて適当で大丈夫」
「え、いいんですか?」
思わず聞き返すと、義母は少し不思議そうな顔をしました。
「みんなでお参りできれば、それでいいじゃない」
隣では夫も「うちはそんな感じだよ」と笑っています。
私はそこで初めて、自分だけが勝手に「ちゃんとしなければ」と身構えていたことに気づきました。
言葉が少ないだけだった
それから、義母から届く荷物の見え方も少し変わりました。
手紙はなくても、秋になればじゃが芋を送り、年末には餅を送り、冬にはみかんを送ってくれる。義母にとっては、それが特別なことではないから、わざわざ長い言葉を添えないのかもしれません。
今も電話は短いままです。
「今日、みかん送ったからね」
「ありがとうございます。届いたらまた連絡しますね」
それだけで終わります。
以前なら少し戸惑っていたその短さも、今では義母らしいなと思えるようになりました。そして義実家へ行く前の晩に、細かな手順を調べることも、いつの間にかなくなっていました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














