「今日、ずっと謝ってる気がする」美術館で苦情ばかり受けていた私。だが、年配の女性が笑って伝えた一言
何を言われても、まず謝っていた
あこがれていた美術館でアルバイトをしていた時期があります。
人気の展示が始まると、予約制でも有名な作品の前には人が集まります。私の役目は、その近くに立って列の流れを整えることでした。
前の人がなかなか動かなければ、後ろにいる人は待つことになります。時間がたつにつれて、声をかけられることも増えていきました。
「すみません、あとどれくらいですか?」
「申し訳ありません。順番にご案内していますので、もう少々お待ちください」
そう答えた直後、今度は別の人から呼び止められます。
「あの人たち、ずっとしゃべってますよね。もう少し静かにしてもらえませんか?」
「確認してきます。少々お待ちください」
私が原因ではなくても、来館者から見れば近くにいるスタッフが窓口です。分かってはいても、何度も続くと気持ちは少しずつ疲れていきました。
休憩中、同僚に思わずこぼしたこともあります。
「今日、ずっと謝ってる気がする…」
「分かる。混んでる日は仕方ないけど、きついよね」
そんな会話をしながら、早く展示期間が終わらないかな、と思う日もありました。
帰り際にかけられた、予想外の言葉
ある日の閉館前、出口へ向かう人たちを見送っていたときです。
一人の年配の女性が、私の前でふっと足を止めました。
「あなた、ずっとここに立ってるでしょう?」
突然だったので、私は反射的に背筋を伸ばしました。
「はい。何かございましたか?」
また何か注意されるのかもしれない。そう思ったのです。
でも、女性は少し笑って言いました。
「いやいや、そうじゃないの。こんなに人が多いと大変でしょう。ずっと案内してくれて、ありがとうね」
思ってもいなかった言葉に、私は一瞬返事ができませんでした。
「あ……ありがとうございます」
やっとそれだけ言うと、女性は「頑張ってね」と軽く手を上げ、そのまま出口へ向かっていきました。
隣にいた同僚が、小さな声で言いました。
「今の、ちょっとうれしいですね」
「うん。なんか……救われた」
自分でも驚くくらい、素直にそう言っていました。
私も、一言を伝えるようになった
それまでの私は、自分が客の立場になると、店員さんやスタッフの人にわざわざ声をかけることはほとんどありませんでした。
会計が終わればそのまま離れる。案内してもらっても、軽く頭を下げるだけ。それで十分だと思っていたのです。
でも、あの日から少し変わりました。
混んでいる店でレジをしてもらったときや、人の多い場所で案内してもらったとき、最後に一言だけ伝えるようになりました。
「ありがとうございます。忙しいのにすみません」
大げさな言葉ではありません。
相手が忙しそうなら、返事を待たずにそのまま離れることもあります。
それでも、自分があの日うれしかったように、一言あるだけで少し気持ちが軽くなることもあるのではないかと思うようになりました。
今でも美術館や混んだ店でスタッフの人を見ると、あの日の女性を思い出します。
私もあんなふうに、気づいたときにさらっと「ありがとう」と言える人でいたいです。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














