「すみません、みんな並んでいますよ」注意しても割り込みする乗客。翌週、バス停で貼られていた案内とは
列の横から、毎回前へ出る人がいた
通勤で使っていたバス停では、朝になると屋根の下に自然と一列の列ができていた。
いつも似たような時間に乗る人が多く、顔ぶれもだいたい同じだった。
そんな中、何度か気になることがあった。
バスが近づいてくると、列には並ばず、脇に立っていた男性がそのまま乗車口の前へ出るのだ。
最初は、列に気づいていないのかと思った。しかし次の朝も、その次も同じだった。
ある日は、先頭に並んでいた女性が声をかけた。
「すみません、みんな並んでいますよ」
男性は一度振り返ったものの、特に返事をせず、そのまま先に乗ってしまった。
わざわざ言い争いにするほどのことでもない。そう考えたのか、女性もそれ以上は何も言わなかった。私を含め、後ろにいた人たちも黙って順番に乗った。
その朝、扉が開く前に聞こえた声
それからしばらくした朝、また同じ男性が列の横から乗車口へ向かった。
ところが、その日はすぐには扉が開かなかった。
運転席から、運転手の声が聞こえた。
「お並びのお客様から順番にご乗車ください」
誰かを名指ししたわけではない。注意するような強い口調でもなく、乗客全体への案内という言い方だった。
男性は乗車口の前で少し止まった。周囲を見ると、何も言わず列の後ろへ回った。
それを確認してから扉が開き、その朝はいつもの列の順番で乗車が始まった。
誰かが責められたわけでも、大きな言い合いになったわけでもない。それでも、毎朝感じていた小さな気まずさが、その一言で少し薄れたように感じた。
翌週、バス停に貼られていた案内
週が明けると、バス停の柱に小さな案内が貼られていた。
「乗車は列の順にお願いします」
書かれていたのは、それだけだった。
あの男性について触れているわけでもなく、特別に厳しい注意が書かれているわけでもない。ただ、これまで何となく守られていた並び方が、誰にでも分かる形で示されていた。
その後、男性が列の横から先に乗る姿を見ることはなくなった。朝になれば、いつものように人が並び、バスが来れば前から順番に乗っていく。
誰か一人が勇気を出して注意し続けなくても、全員に同じ案内があれば済むこともある。あの白い紙を見るたび、そんなことを思い出す。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














