「誰のか分からないですしね」集積所に残されたゴミ袋。だが、困惑していた状況で決められた新しいルールとは
収集のあと、いつも一つか二つの袋が残っていた
通りの角に、網かごの集積所があります。私が引っ越してきたころから、ときどき収集が終わったあとにもゴミ袋が残っていました。
出す曜日を間違えたのか、分別に問題があったのか、私には分かりません。ただ、回収されなかった袋だけが網かごの中に残り、次の朝までそのままになっていることがありました。
「また残ってますね」
同じ時間にゴミを出しに来る方が、袋を見ながら言いました。
「誰のか分からないですしね」
私も、それ以上は何も言えませんでした。
誰が出したのか分からない以上、勝手に開けるわけにもいきません。それでも集積所に残したままだと、新しく出された袋と混ざってしまいます。
最後まで残った方が、袋を端へ寄せたり、網を掛け直したりしていることもありました。私も手伝おうと思いながら、どこまで触っていいのか分からず、声をかけるタイミングを逃していました。
秋の集まりで決まった、小さなルール
その年の秋、自治会の集まりで集積所の話が出ました。
誰が出しているのかを探そう、という話にはなりませんでした。代わりに会長が提案したのは、集積所の横に蓋つきの箱を置くことでした。
「残ったゴミ袋は、こちらの箱に入れておいてください」
収集後に残っている袋はいったん箱へ移し、自治会で集積所を確認するときに、中身を開けずに収集日や袋の状態を確認する。
それでも対応できないものは、そのまま自治会で相談することになりました。
「誰が出したのかを探すより、まず集積所を使える状態にしておきましょう」
その言葉に、何人かがうなずいていました。
箱が置かれた次の週から
翌週、集積所の横に木の箱が置かれていました。板を組んだだけのそっけない箱で、雨が入らないように蓋がついています。
その日も、収集後に一袋だけ残っていました。
私は少し迷ってから箱の蓋を開け、その袋を中へ移しました。それだけで、網かごの中は空になりました。
以前なら「これは誰が片づけるんだろう」と何人かで袋を見ていたところです。でも今は、やることが決まっています。誰か一人が最後まで残る必要もありません。
しばらくして、以前よく袋を端へ寄せていた方と集積所で一緒になりました。
「前より楽になりましたね」
私がそう言うと、その方も箱を見て笑いました。
「どうしたらいいか分かるだけでも違いますね」
回収されない袋が、完全になくなったわけではありません。それでも、残った袋を前にして誰も動けずにいる朝はなくなりました。
必要だったのは、誰かを突き止めることではなく、困ったときにどうするかを決めておくことだったのだと思います。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














