「すぐ買い物終わるから、いいでしょう」軽自動車の枠をはみ出して停めた車。今も忘れられない警備員の姿とは
白い線をはみ出したまま、その車は残っていた
四年ほど前の冬、近所のスーパーへ買い物に行ったときのことです。その日は駐車場がかなり混んでいて、空きを待つ車が通路の端に数台並んでいました。
私もその列の後ろにつき、少しずつ前へ進みながら待っていました。
腕時計を見ると、駐車場に入ってから十分ほど経っていました。
やがて、前の車が一台入ったあと、軽自動車用の枠が一つ空きました。
私の車は軽自動車だったので、ようやく停められると思って前へ進みました。
ところが、そのとき横から大きめの車が入ってきて、その枠へ頭から入ってしまったのです。
車体は白い線を大きくはみ出していました。
すぐに警備員さんが小走りで近づき、運転席へ声をかけました。
「恐れ入ります。こちらは軽自動車の枠になっておりまして」
運転していた人は窓を開けましたが、車を動かす様子はありません。
警備員さんはもう一度、穏やかな声で伝えました。
「別の枠へお願いできますでしょうか」
それでも相手は動かず、警備員さんは何度も同じように、ここは軽自動車用の枠だと説明していました。
すると運転していた人は、
「すぐ買い物終わるから、いいでしょう」
とだけ言い、車を降りて店のほうへ歩いていってしまいました。
声をかけても、車は動かなかった
後ろでは、私を含め何台もの車が空きを待っています。
警備員さんは、白線を大きくはみ出した車のそばにしばらく立っていました。
追いかけていくわけにもいかないのか、困ったような表情で駐車場を見回していた姿を覚えています。
そのあと別の枠が空いたので、私はそこへ車を停めました。
買い物を終えて戻ってくると、あの車はもうありませんでした。その後どうなったのかは分かりません。
一緒にいた家族が、駐車場を振り返って言いました。
「あの警備の人、大変だね」
「うん」
私もそれ以上は何も言いませんでした。
今でも思い出すのは、枠を先に使われたことより、丁寧に声をかけ、それでも応じてもらえなかった警備員さんの姿です。
駐車場で誘導をしてくださる方を見るたび、私はときどき、あの日のことを思い出します。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














