「ここ電車だよ?」電車の中で髭を剃り続ける男性。音が鳴るたび、周囲の乗客が取った行動
朝の電車で、突然「ウィーン」と音がした
朝の通勤電車でのことです。座席はすべて埋まり、私はつり革につかまって立っていました。
車内では携帯電話を見ている人が多く、話し声はほとんどありません。
聞こえるのは電車が走る音と、ときどき誰かがする咳くらいでした。
その中に突然、聞き慣れない音が混ざりました。
ウィーン、と低い機械音がします。
最初は、ドアの近くにある何かの装置が鳴っているのだと思いました。
ところが、少しするとまた同じ音がします。
気になって音のするほうを見ると、ドアのそばに立っていた人が、片手で体を支えながら、もう片方の手で電気シェーバーを顔に当てていました。
電車の中で、髭を剃っていたのです。
(ここ電車だよ?)
私は一瞬、何をしているのか理解できませんでした。
電車が揺れても、その人は慣れた様子でシェーバーを動かしています。
頬からあごへ、また頬へ。音が止まったかと思うと、少し場所を変えてまた「ウィーン」と鳴り始めました。
朝、時間がなかったのかもしれません。
それでも、混んだ電車の中で髭を剃る人を見たのは初めてでした。
誰も注意せず、少しずつ離れていった
しばらくして、その人のすぐ近くに立っていた人が、半歩ほど後ろへ下がりました。
その隣の人も、体を少し横へずらします。
満員に近い車内なので、大きく離れることはできません。
それでも、その人の周囲だけ、人との間隔がわずかに広くなっていきました。
誰も「やめてください」とは言いませんでした。
私も何も言えず、つり革を握ったまま、なるべくそちらを見ないようにしていました。
周囲を見ると、携帯電話に目を落としている人や、窓のほうを向いている人がいます。
その人は、次の駅に着くまで髭を剃り続けていました。
次の駅で私は電車を降りました。
ホームから車内を見ると、その人はまだドアの近くに立っていました。そして、その周囲にはほんの少しだけ隙間が残っていました。
注意した人はいませんでしたし、私も何も言えませんでした。
ただ、誰かが指示したわけでもないのに、近くにいた人たちが少しずつ距離を取っていったことだけは、妙にはっきり覚えています。
今でも朝の電車で「ウィーン」という機械音を聞くと、あの日、電気シェーバーを手にしていた人の姿を思い出します。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














