「毎日毎日うるさいんだけど!」廊下を走った子どもを注意した直後、隣人に責められた私。だが、その場の空気を変えた一言とは
エレベーターを降りたところで、二人が駆け出した
保育園から帰ってきた夕方のことだった。エレベーターを降りると、下の子が急に駆け出し、上の子もつられるように後を追った。
私は保育園の荷物と買い物袋を両手に持っていて、すぐには追いつけない。
「こら、走らないの。ここはみんなが通るところでしょ」
少し強めに言うと、二人は足を止めた。
「おうちまで歩こう。約束ね」
上の子が「はーい」と返し、下の子も隣で小さくうなずいた。それからは二人とも、私の前をゆっくり歩いていた。
注意してから20秒ほどだったと思う。自宅の前まで来て、私が玄関の鍵を出そうとした、そのときだった。
隣の部屋のドアが勢いよく開いた。
「ちょっと、毎日毎日うるさいんだけど!」
突然の大声に、私は手を止めた。
「すみません。今、走ったので注意したところです」
「注意したって、走ってるじゃない。廊下でバタバタされたら響くんだよ」
確かに、走ったことはこちらが悪い。私はもう一度頭を下げた。
「すみません。これから気をつけます」
ところが、相手の声はなかなか収まらなかった。
「前から気になってたんだよ。ちゃんと見ててよ。親なんだから」
上の子が私の後ろに隠れ、下の子は驚いたのか泣き出してしまった。
「すみません。でも、子どもの前なので、そんなに大きな声で言うのはやめてもらえませんか」
私もだんだん声が硬くなっていた。
下の階から、様子を見に来た人
「泣いたって仕方ないでしょ。こっちはずっと我慢してるんだから」
そう言われたとき、階段のほうから足音が聞こえた。
見ると、下の階に住んでいる女性が踊り場からこちらを見上げていた。
「あの……大丈夫ですか? さっきから声が聞こえてるので」
女性は少し迷うようにしながら、こちらまで上がってきた。
隣の人がすぐに言った。
「この子たちが廊下を走ってたんですよ」
すると女性は私たちを見てから、静かに答えた。
「さっき、お母さんが『走らないの』って注意してる声は聞こえてましたよ。そのあと静かになってましたけど……」
隣の人は一瞬黙った。
「でも、前からうるさいんです」
「それは困りますよね。ただ、今はお子さんも泣いてますし、続きは落ち着いてからでもいいんじゃないですか」
女性は責めるような言い方ではなかった。ただ、いつまでも玄関先で言い合いを続ける空気ではなくなった。
隣の人も少し視線をそらし、最後に「……もういいです」とだけ言って部屋へ戻っていった。
ドアが閉まると、私はようやく息を吐いた。
「すみません、ありがとうございました」
女性は首を振った。
「私も声が聞こえて、何かあったのかと思っただけだから。でも、びっくりしたよね」
そう言われ、下の子は涙をぬぐいながらうなずいた。
上の子も、小さな声で「もう走ってないよ」と言った。
「うん、聞こえてたよ」
女性はそれだけ言って、階段を下りていった。
もちろん、廊下を走ったことはこちらが悪い。子どもだから仕方がないで済ませるつもりもない。
ただ、注意した直後にもかかわらず、子どもが泣くほど強い口調で責められ続けたことには、今でも少し引っかかっている。
次の日の朝、ごみを出しに行くと、隣の人がエレベーターの前に立っていた。私に気づくと、少しだけ目をそらし、そのまま階段のほうへ歩いていった。
それ以来、顔を合わせても挨拶を交わす程度になった。
私も以前より、エレベーターを降りる前に二人へ「廊下は歩こうね」と声をかけるようにしている。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














