「それでチャラってことでいいじゃん」1万円を数か月返さないバイト仲間。だが、催促した時の信じられない言い分とは
閉店後のカウンターで頭を下げた男性
10年ほど前、私が大学生だったころの話です。当時、私は夜の飲食店でアルバイトをしていました。
職場には、私とは親子ほど年の離れた男性のアルバイト仲間がいました。
普段からよく話す間柄で、仕事が終わると飲みに連れていってくれることもありました。
会計はいつも男性が払ってくれました。
私が財布を出そうとしても、「いいから、いいから」と手で止められるのです。
そんなある夜、閉店後にカウンターを拭いていると、その男性が向かい側にやってきました。
「あのさ、申し訳ないんだけど…ちょっとお金貸してくれない?」
突然の頼みに驚いていると、男性は両手を合わせ、頭を下げました。
「1万円、来週までに必要で…。頼めないかな」
大学生の私にとって、1万円は決して小さな額ではありません。正直、迷いました。
けれど、これまで何度もごちそうになっていたことが頭をよぎります。困っている男性を前に、どうしても断りきれませんでした。
結局、私は財布から1万円を取り出して渡しました。借用書なども作らず、返済について細かく確認することもしませんでした。
「いつもおごってやってるだろ」と笑う男性
ところが、お金を貸してからしばらくたっても、男性から返済の話は出ませんでした。
気になった私は、休憩中に思い切って声をかけました。
「あの、この前の1万円なんですけど……」
すると男性は、軽く手を振って答えました。
「ああ、もうちょっと待って」
その言葉を信じて待ちましたが、男性からお金が返ってくることはありませんでした。
それから数か月が過ぎた、ある日の閉店後。私はカウンターにひじをついていた男性に、もう一度声をかけました。
「すみません。前に貸した1万円、そろそろ返してもらえませんか?」
すると男性は、悪びれる様子もなく笑いました。
「ええ?いつもおごってやってるだろ。それでチャラってことでいいじゃん」
私は思わず言葉を失いました。
確かに飲みに連れていってもらったことはあります。でも、こちらからおごってほしいと頼んだわけではありません。
それに、あの1万円は、男性が頭を下げて借りていったお金です。
「でも、貸したお金ですし……」
そう言いかけたとき、すぐ近くから声がしました。
「いや、それは違うだろう」
声の主は、カウンターの奥で売上を数えていた店長でした。
店長は手を止め、こちらへ回ってきました。
「今の話、聞こえてたよ。飲みに誘って、おごったのは自分だろ?」
「いや、まあ……そうですけど」
男性は先ほどまでの笑顔を消し、目をそらしました。
店長は落ち着いた声で続けました。
「おごった飲み代と借りたお金は別だろう。それを勝手にチャラにするのはおかしいよ」
「……はい」
「今返せるなら、ここでちゃんと返しなさい」
男性は何も言い返せず、カウンターからひじを下ろしました。
厨房の奥で片づけをしていた先輩も、手を止めてこちらを見ていました。
しばらく黙っていた男性は、ようやく財布を取り出しました。そして中をのぞいたあと、1万円を私の前に差し出したのです。
「……はい」
私はお札を受け取り、店長に頭を下げました。
「ありがとうございます。本当に助かりました」
店長は小さくうなずくと、レジの前へ戻っていきました。
男性は財布をしまい、誰とも目を合わせないまま店を出ていきました。
それ以来、男性が私を飲みに誘うことはなくなりました。
ようやく1万円が戻ってきて、ほっとしました。それと同時に、どれだけ親しくても、お金を貸すときは返済についてきちんと話しておくべきだったと感じました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














