「ちょっと焼くだけじゃない」ホテルの朝食でオムレツの列に割りこんだ客。だが、スタッフの冷静な返答に顔を赤くした
オムレツの列に突然割りこんできた女性客
旅行先のホテルで迎えた朝のことです。私は朝食会場で、料理を選びながらゆっくり食事を楽しんでいました。
なかでも気になったのが、目の前でオムレツを焼いてくれるコーナーです。
コック帽をかぶったスタッフが、注文を受けるたびにフライパンでオムレツを焼いていました。私も皿を持って列に並び、自分の番を待っていました。
そのときです。列の横から一人の女性客が近づいてきました。
女性客は並んでいる人たちを気にする様子もなく、先頭の客の前にするりと入り、スタッフに皿を差し出したのです。
「ねえ、すぐ済むから先にいい?」
突然のことに、周囲の客たちは驚いた顔をしていました。
ところが女性客は、そんな視線にもお構いなし。先頭の客に背を向けたまま、カウンターへ身を乗り出します。
「オムレツなんて、すぐ焼けるでしょ?先にお願い」
私の前にいた年配の女性客も、困ったように眉を寄せていました。
みんな順番を待っているのに、どうして自分だけ先に作ってもらえると思うのでしょうか。
スタッフがすぐに応じないと、女性客は皿でカウンターの縁をこつこつと叩き始めました。
「ねえ、まだ?待ってるんだけど」
その声に、私も思わずスタッフのほうを見ました。
スタッフの一言に、女性客の態度が一変
すると、焼き手のスタッフがフライパンを持ったまま女性客に向き直りました。
「申し訳ございません。ご注文の順にお作りしております」
穏やかな声でしたが、はっきりとした返答でした。
そして、並んでいる客たちに目を向けて続けます。
「皆さまお待ちですので、列の最後尾にお並びいただけますか」
女性客は一瞬、言葉に詰まったようでした。しかし、すぐに不満そうな顔をします。
「だから、ちょっと焼くだけじゃない。そんなに時間かからないでしょ?」
スタッフは表情を変えずに答えました。
「申し訳ございません。お時間にかかわらず、順番にお作りしておりますので」
女性客は何か言いかけましたが、結局、言葉が続きませんでした。
列のほうから小さな笑い声が聞こえ、先ほど眉を寄せていた年配の女性客も、思わず口もとを押さえていました。
女性客の顔が赤くなります。ようやく差し出していた皿を下ろすと、うつむきながら列の横を歩き始めました。
先ほどまでの強気な態度はどこへやら。並んでいた客たちの前を通り過ぎ、最後尾に静かに並び直したのです。
スタッフは先頭の客に向き直り、いつもの穏やかな声で尋ねました。
「お待たせいたしました。中身はいかがなさいますか?」
何事もなかったように調理が再開され、私もほっとしました。
やがて私の番になると、スタッフは焼きたてのオムレツを皿にのせてくれました。
「お待たせいたしました。熱いのでお気をつけください」
私はお礼を言い、温かい皿を持って窓ぎわの席へ戻りました。
ナイフを入れると、中からとろりとした卵が広がります。
順番を守って待った人に、いつもどおり丁寧に接してくれたスタッフ。その落ち着いた対応のおかげで、気持ちよく朝食を楽しむことができました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














