「ちょっとは勉強したんですね」人を育てる気ゼロの先輩衛生士→子育ての合間に猛勉強した私に届いた皮肉混じりの一言
人を育てる気ゼロの先輩衛生士
子どもの手が少し離れた40代で、町の歯医者にパートで入ったときのことです。
未経験のスタートに不安はあったものの、診療所の先生は穏やかで、現場で覚えていけばいいよと笑顔で迎えてくれました。
問題は、現場を取り仕切っていた独身で年下のベテラン衛生士の方でした。
掃除の段取りを聞けば、鼻で笑われる。
器具の種類を取り違えれば、診療台の横で仁王立ち。
陰口も達者で、休憩室では同年代のスタッフの噂をリーダー気取りで広げていました。
人を育てる気がまるで感じられない、というのが、最初の数週間で見えてきた印象です。
「何で聞かないんですか?」
その日も器具の選択を一つ間違えただけで、診療所中に響く声が飛んできました。
先生は患者さんの口元から目を離せないので、その場をとりなしてはくれません。
気づけば、私の前にいた未経験のパートさんも、その前のパートさんも、半年と経たずに辞めていったと、先輩スタッフが教えてくれました。
みんなあの態度に削られて、最後はそっと荷物をまとめていったのだそうです。
猛勉強の半年と動いた一言
このまま辞めて、また新人が一人増えるのは悔しい。そう思ってからの私は、スイッチを切り替えました。
子どもが寝静まった夜、専門書を一冊ずつ買い足していきます。
器具の名称、滅菌のタイミング、レントゲンの種類。手書きのノートにまとめ、子どもの登校前と登校後で30分ずつ机に向かいました。
正直、地味で報われない時間です。
それでも半年続けると、診療台の横で立っている自分の景色が変わっているのに気がつきました。
先生が次に何を欲しがっているかが分かる。
器具を渡す手が、迷わなくなっている。質問にも、的の真ん中を返せるようになっていたのです。
勉強を始めて半年が過ぎた昼休み。彼女がカルテを戻しながら、私の方を見ずにつぶやきます。
「ちょっとは勉強したんですね」
声はそっけなく、語尾にはお決まりの皮肉。
それでも、これまで存在しないもののように扱われていた私への、確かな反応でした。
休憩室を出た廊下で、私は深く息を吐きます。胸の奥が、ふっと軽くなった感覚がありました。
誰にも気づかれない夜の机に向かい続けたことが、ようやく現場の空気を一センチ動かした瞬間。皮肉混じりの一言が、私にとってはどんな褒め言葉より重く響いた午後でした。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














