「みんなの迷惑だ、出ていけ!」嫌がらせを受けた同じ階の住人。相談を受けた私がとった行動とは
ポストの匿名手紙
その集合住宅で嫌がらせが起きていると知ったのは、同じ階に住む男性から、思い詰めた顔で相談を受けたときだった。長く暮らしてきた、顔なじみの多い建物だった。
「ポストに、こんなものが入っていたんです」
差し出された便箋には、乱暴な字がびっしりと並んでいた。生々しい言葉は伏せるが、要約すればこういうことだった。
「みんなの迷惑だ、出ていけ!」
男性はすっかり怯えていて、隣に住む一家の仕業だと思い込んでいた。けれど、その一家は日ごろから物腰のやわらかい人たちで、私にはとても書き手だとは思えなかった。
男性は、夜も眠れず、物音がするたびに玄関を確認してしまうのだと打ち明けた。手紙のせいで、住み慣れた家が安心できる場所ではなくなっていた。
「もう、この部屋を出ようと思っています」
そう肩を落とす男性に、私は思わず身を乗り出した。
「待ってください。泣き寝入りしたら、相手の思うつぼですよ」
誰が書いたのかもわからないまま、逃げるように出ていくなんて悔しすぎる。私は、きちんと筋を通して調べようと男性に持ちかけた。
問い詰めた住人の顔
まず管理会社に連絡を取り、自治会長にも間に入ってもらった。郵便受けの前には防犯カメラがある。私たちは担当者と一緒に、直近の映像を一つずつ確認していった。
すると、深夜の時間帯に、ポストへ紙を押し込む人物がはっきりと映っていた。何度も巻き戻して確かめたが、間違いなかった。
それは疑われていた隣の一家ではなく、少し離れた部屋に住む住人だった。以前、些細なことで住民ともめていた人だった。
管理会社と自治会長の立ち会いのもと、その住人に事情を尋ねた。相手は最初、平然とした態度を崩さなかった。
「証拠でもあるの?」
ひらき直ったようなその一言に、担当者は静かに答えた。
「カメラに全部映ってます」と言って、印刷した写真を見せた。
その瞬間、住人の表情がこわばった。口を開きかけては言葉を飲み込み、最後は目を伏せて黙り込んでしまった。反論はもう、一つも出てこなかった。
それ以来、嫌がらせの手紙はぱたりと届かなくなった。
男性は何度も頭を下げ、ようやく穏やかな表情を取り戻した。差出人だった住人は、廊下で顔を合わせても、うつむいて足早に通り過ぎるようになった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














