「男の人なのに、家事を手伝って偉いわねえ」父だけ褒め続ける親戚。だが、娘の言葉に救われた瞬間
母だけが二役を担っていた家
共働きの両親のもとで、私は育った。
父も母も、同じようにフルタイムで働いていた。
それなのに、家の中の景色はまるで違った。父が受け持つ家事は、洗濯だけ。
母が、それ以外のすべてを担っていた。
朝は誰より早く起きてお弁当を作り、夜は仕事から帰ってすぐ台所に立つ。
掃除も、買い出しも、私たちの送り迎えも、家計のやりくりも、全部母だった。
子どもの頃は、それが当たり前だと思っていた。
おかしいと気づいたのは、自分が働きながら暮らすようになってからだ。
母がこなしていた家事の量は、とても片手間で回せるものではなかった。
それを母は、文句ひとつ言わずに何年も続けていた。
そんな我が家に、正月になると決まって口を出す人がいた。父の姉にあたるおばだ。親戚が集まる席で、おばはいつも父だけを褒めた。
「男の人なのに、家事を手伝って偉いわねえ」
母へのねぎらいは、ひとこともない。同じように働き、家事の大半を背負う母には、目もくれないのだ。
子どもの頃、私は一度だけおばに尋ねたことがある。
「お母さんのことは褒めないの?」
「女が家のことをするのは当たり前。褒めることじゃないでしょう」
おばは少しも悪びれず、そう言い切った。同じ女性でありながら、母の苦労にはまるで気づいていない。その言葉が、幼い私の胸にずっと残っていた。
正月の食卓で並べた家事の内訳
三十代になったその年の正月も、おばはまた同じ台詞を口にした。
「お父さんは家事もして、偉いわねえ」
私は箸を置いて、まっすぐおばを見た。
「洗濯以外は全部、母の仕事です」
おばの表情が、ぴたりと止まる。
「朝ごはんもお弁当も、掃除も買い物も、ぜんぶ母がやってます。父がするのは、洗濯物を干すことだけ。母も同じだけ働いてるのに、褒められるのはいつも父なんです」
責める口調ではなく、私はただ事実を一つずつ並べた。おばは何か言い返そうとして、口ごもった。
「……知らなかったわ。てっきり、お父さんがよく動く人だと思ってて」
「動いてるのは母ですよ。洗濯を褒めるなら、毎日のごはんも褒めてあげてください」
おばは、それきり黙ってしまった。翌年から、父だけを褒める言葉は、ぴたりとやんだ。
隣にいた母が、そっと私の手を握った。
「よく言ってくれたわね」
その声が、少しだけ震えていた。長いあいだ、誰にも気づいてもらえなかった。そのことを母は口にしなかったけれど、握り返してきた手の力が、全部を語っていた。
その正月から、母は前より軽い顔で笑うようになった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














