「内孫やから、10万より多いやろ」式の当日に人前で金額を口にした従妹に、私が黙って返した一言
鞄の内ポケットに入れて家を出た
従妹の式の当日、私は鞄の内ポケットに祝儀袋を入れて家を出ました。
祖母から預かったものです。膝が悪くて式には来られず、前の日に私の家まで届けにきました。
「落とさんように、袱紗ごと持っていき」
「わかってる。手渡しするから」
式場に着いて親族の控室をのぞくと、従妹が親戚に囲まれていました。
叔母たちはお茶を飲みながら、着物の裾を直しています。写真の順番を決める声と、久しぶりに会った人の笑い声が重なっていました。
頃合いを待って、私は袋を渡しました。
人前で、金額が声になった
「おばあちゃんから。来られへんかったこと、すごい気にしてた」
従妹はその場で袱紗を開き、封をはがしました。部屋にいた七、八人の目が、そちらに集まります。
「10万円や」
紙幣を指でそろえながら、従妹はこちらを向きました。
「あんたのときは、なんぼやった」
「え」
「内孫やから、10万より多いやろ」
言い返す言葉はいくつも浮かびました。
どれも、この部屋で言うことではありません。私は袋のほうを指しました。
「おばあちゃん、それ持って昨日うちまで来てくれてん」
従妹の手が止まりました。
数えかけの紙幣を袋に戻し、封を指で押さえます。口を開きかけて、声にならないまま閉じました。
「……ごめん。うち、浮かれてたわ」
向かいに座っていた叔母が、湯呑みを置きました。
「膝があかんようになってからも、あの人ずっと気にしてはったからね」
従妹は袋を鞄にしまい、鏡のほうを向き直りました。話し声が戻るまで、少し間があります。
祖母の家に寄った帰り
披露宴は滞りなく進みました。私は写真係のようになって、祖母に見せるぶんを撮り続けています。
帰りに祖母の家へ寄りました。
「どうやった」
「きれいやったよ。おばあちゃんの袋、ちゃんと受け取ってた」
「そうか。あの子、小さいころからよう笑う子でな」
祖母は写真を一枚ずつ、指でなぞるように見ていました。
いくら包んだのかは、最後まで口に出しません。
その夜、私は連絡先の画面をしばらく見て、そのまま閉じました。
消してはいません。こちらから開くのをやめただけです。
式から一年が過ぎました。従妹とは、あれきりになっています。祖母は写真を焼き増しして茶の間の壁に貼り、行くたびに一枚ずつ説明してくれます。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














