「すみません。バランスを崩してしまって」電車でぶつかってしまった乗客。後日、私が気づいた気遣いの方法とは
揺れるたび、隣の男性がこちらへ傾いてきた
だいぶ昔、毎朝の通勤電車で、私はよく扉脇の壁際に立っていました。混んでいても背中を預けられるので、立ちっぱなしの通勤では少し楽な場所でした。
ある朝、若い男女に付き添われた高齢の男性が乗ってきました。
男性は足元が少し不安定な様子で、付き添いの二人が両側から支えています。
電車が大きく揺れたとき、その男性の体が私のほうへ傾いてきました。
とっさに踏ん張りましたが、次の揺れでもまた肩が触れます。
付き添いの人が「すみません。バランスを崩してしまって」と頭を下げました。
「大丈夫ですよ」
そう答えたものの、私はそのあとも少し身構えていました。
男性も、こちらへ倒れないよう気をつけているように見えます。付き添いの二人も、そのたびに腕に力を入れていました。
その朝は、それ以上何かをすることもなく、男性たちが先に電車を降りました。
次に会った朝、立つ場所を入れ替えた
数日後、同じ時間の電車で、その三人をまた見かけました。
私は前と同じ壁際に立っていましたが、男性が乗ってくるのを見て、前回のことを思い出しました。
そこで一歩横へずれ、私がいた壁際を空けました。
「ここなら少し楽だと思います。どうぞ」
付き添いの人は少し驚いたあと、「ありがとうございます」と会釈しました。
男性も小さく頭を下げ、壁に背中を預けるようにして立ちました。
それだけで、前の朝とはずいぶん違って見えました。
電車が揺れても男性の体が大きく傾くことはなく、付き添いの二人も前ほど強く支え続けなくてよさそうでした。私も、その横で普通につり革につかまっていられます。
我慢する以外にも、できることがあった
最初の朝、私は「自分が踏ん張ればいい」としか考えていませんでした。
相手を責めたいわけでもなかったので、黙って受け止めるのが一番いいと思っていたのです。
けれど、場所を少し入れ替えるだけで、お互いにずっと楽になりました。
それから、その三人を同じ電車で何度か見かけました。私が壁際にいるときは、できるだけ場所を空けるようになりました。会えば軽く会釈する、それくらいの関係でした。
今でも混んだ電車で、立つのがつらそうな人を見かけると、ときどきあの朝を思い出します。
黙って我慢することだけが気遣いではなく、自分の立ち位置を少し変えるだけで済むこともある。あのとき初めて、そんなことに気づきました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














