「そんなの、気にするほうが悪いのよ」満員電車で香水を吹きかけ続けた女性。だが、年配の男性の一言から車内に起きた変化
混雑した電車で取り出した香水の瓶
その日は残業がなく、夕方の早い時間に帰りの電車に乗りました。
それでも車内は帰宅する人で混み合っていて、私は鞄を足元に置き、つり革を握って立っていました。
途中の駅で、50代くらいの女性が乗ってきました。ちょうど私の斜め前の席が空き、女性はそこに腰を下ろしました。
すると、バッグから小さな香水の瓶を取り出し、首元にシュッと吹きかけたのです。
途端に、甘く強い香りが漂ってきました。
周囲の人たちも気になったようで、顔をしかめたり、少し顔を背けたりしています。
私も思わず鼻を押さえました。これだけ混んでいると、場所を移すことも簡単ではありません。
すると、ドアの脇に立っていた男性が女性に声をかけました。
「あの、すみません。電車の中ですよ」
女性は男性を見上げ、不思議そうな顔をしました。
「だから、何ですか?」
「いや、香水です。ちょっとにおいが強くて…」
「そんなの、気にするほうが悪いのよ」
そう言って顔をそむけると、女性はまた首元に香水を吹きかけました。
しかも、それで終わりません。少し間を置いて、もう一度。
注意された後に、さらに2回も吹きかけたのです。
近くでは咳き込む人もいました。声をかけた男性も困ったように黙り込み、私はこれ以上何も言えそうにないと感じました。
次々と開き始めた車内の窓
そのとき、私の隣に立っていた年配の男性が動きました。
座席に座っている乗客に、穏やかな声で尋ねたのです。
「すみません。ちょっと窓を開けてもいいですか?」
「あ、はい。どうぞ」
男性は腕を伸ばし、座席の上の窓を少し下げました。
すると、向かいの座席にいた人も振り返り、自分の後ろの窓を開けました。
さらに、その隣や車両の奥でも窓を開ける人が現れ、少しずつ外の風が入ってきました。
「これくらいで大丈夫ですかね」
「はい、助かります」
誰も香水の女性を責めるわけではありません。ただ、少しでも車内の空気を入れ替えようとしているようでした。
女性の隣に座っていた若い女性も、そっと席を立ち、離れたドアの前へ移動しました。
香水を吹きかけていた女性は、開いた窓を順番に見回していました。
そして手元の瓶に目を落とすと、何も言わずバッグの奥へしまったのです。
次の駅に着くと、女性はそのまま静かに降りていきました。
ドアが閉まり、電車が動き出すと、残っていた香りも少しずつ薄れていきました。
先ほど咳き込んでいた乗客も、ようやく落ち着いた様子です。
「やっと息ができますね」
思わずそうつぶやくと、隣の年配の男性が小さく笑いました。
「本当ですね」
私たちは顔を見合わせ、そっと頷きました。
何度注意しても聞き入れてもらえないことがあります。そんなとき、相手を言い負かすのではなく、自分たちにできることをする。
あの男性の落ち着いた行動が、今でも印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














