「来月ちゃんと返すね」彼女に貸した3万円。数か月後、別れ話で僕が見せたメッセージ
僕の前でだけ薄くなる財布
5年ほど前に付き合っていた彼女は、週末に食事へ行くと、会計の前で財布の中をのぞいて困ったように笑うことがあった。
最初は焼き鳥屋へ行った日のことだった。
「ごめん、今月きついから…今日は多めに出してもらってもいい?」
「うん、いいよ。気にしないで」
そのときは、本当に余裕がない月なのだろうと思っていた。
ところが翌月、今度は一緒に入った雑貨店のレジで、彼女が財布を開いたまま申し訳なさそうに言った。
「また今月きついから……これも出してもらっていい?」
少し引っかかったものの、僕はそのまま支払った。
「まあ、今回はいいよ」
それからは食事や買い物のたびに、僕が先に財布を出すことが増えていった。気づけば、ひと月に2〜3万円ほど負担するのが当たり前になっていた。
旅行を翌週に控えた夜には、彼女からさらに頼み事をされた。
「旅行代が3万円だけ足りなくて……悪いんだけど、貸してもらえない? 来月には返すから」
僕は少し迷った。
「……わかった。じゃあ、今度会うときに持っていくよ」
次に会った日に3万円を渡すと、その夜、彼女からメッセージが届いた。
「ほんと助かった。ありがとう。来月ちゃんと返すね」
けれど翌月になっても、その次の月になっても、返すという話は出なかった。
こちらから「返して」と言えばいいだけなのに、お金のことを細かく言う人だと思われるのが嫌で、僕もなかなか切り出せなかった。そのあいだも週末の食事代は僕が払うことが多かった。
そんなある日、共通の友人と昼を食べていたとき、何げない会話から彼女の話になった。
「あの子、最近も飲み会に来てるし、買い物もしてるみたいだけど」
思わず聞き返した。
「え?僕にはずっと、お金がきついって言ってるんだけど」
友人は少し驚いた顔をした。
「そうなの?少なくとも私たちといるときは、そんな感じじゃないけどな」
「……じゃあ、僕の前でだけなのかな」
「そこまでは分からないけど、いつもお金に困ってるようには見えないよ」
その言葉を聞いて、それまで見ないようにしていた違和感が、急にはっきりした気がした。
別れ話で返した一言
別れを決めたのは、それから少しあとのことだった。
いつもの店で向かい合い、お互いに言いたいことを話し終えると、テーブルには冷めたコーヒーだけが残った。
彼女が席を立とうとしたところで、僕はずっと言えなかったことを切り出した。
「あのさ、最後にひとつだけいい?」
「なに?」
「旅行のときに貸した3万円、覚えてる?」
彼女は少し間を置いてから言った。
「あれ?あれって、出してくれたんだと思ってた」
その返事には、さすがに驚いた。
「いや、来月返すって言ってたよね」
「そうだっけ…」
僕は携帯電話を開き、当時のメッセージを見せた。
そこには、彼女自身が送ってきた「来月ちゃんと返すね」という言葉が残っていた。
画面を見せながら、僕は言った。
「僕が出したんじゃないよ。貸したんだよ」
彼女はしばらく画面を見たあと、視線を落とした。
「……ごめん。私、勝手にそう思ってた」
「うん。返してくれれば、それでいいよ」
「わかった。ちゃんと返す」
数日後、僕の口座には3万円が振り込まれていた。
友人にそのことを話すと、「ちゃんと言えてよかったね」と返ってきた。
僕は彼女とのメッセージ画面を閉じ、そのあとはこちらから連絡することはなかった。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














