「人のバッグを欲しがらないで」うちから消えた夫の贈り物を提げて笑うママ友が、内ポケットを開けて立ち尽くした
棚の上のバッグ
服を届けに来たママ友が、私のバッグを勝手に肩にかけました
幼稚園のママ友が、お下がりの服を届けにうちへ来た日のことです。
リビングの棚には、参観日用に出しておいたバッグがありました。
夫が贈ってくれた物で、娘は『ママのおでかけバッグ』と呼んでいます。
ママ友は断りもなく、それを肩にかけて窓に映しました。
「私のほうが似合うわね」
「夫からの贈り物なんです」
ママ友はふふっと笑って、バッグを棚へ戻しました。
1週間後、そのママ友が同じバッグを提げて公園に現れました
私がお茶をいれに立つあいだも、ママ友はリビングにいました。
帰りは、服を入れてきた大きな紙袋を大事そうに抱えていました。
翌朝、棚の上は空でした。でも、私がどこかへしまい込んだだけかもしれず、誰にも言えませんでした。
1週間後、お迎えのあとの公園。ベンチに座る私と、その後ろに立つ他のママ友のところへ、家に来たママ友が同じバッグを提げて現れました。
「見て、奮発しちゃった」
色も形も、うちのと同じでした。
「…どこで買ったんですか?」
うちのが見当たらないと話すと、ママ友は私を笑いものにしました
うちにも同じのがあったのに見当たらなくて。思わずそう続けると、ママ友は眉を上げ、他のママ友に聞こえるように言いました。
「人のバッグを欲しがらないで」
じろじろ見るなんて怖いわね、と私に向かって肩をすくめます。
「ち、違うんです」
同じバッグは、店にいくらでもあります。証拠もなく疑えば、ママたちの輪にいられなくなる。
娘の友だち付き合いまで浮かび、言葉が続きませんでした。
中まで全部
中まで全部自分の物と言うママ友に、私はひとつ頼みました
ママ友は勝ち誇ったように、バッグの口を大きく開けて私の前に突き出しました。
「中まで全部、私の物よ」
その言葉で、私は顔を上げました。
「内ポケットを、開けてください」
ママ友は、何を今さら、と鼻で笑いました。
ママ友が開けた内ポケットから、娘が描いた絵が出てきました
ママ友は内側のファスナーを引き、指を差し入れました。
「何も入ってないわよ」
その指が、折りたたんだ紙をつまみ出しました。広げると、クレヨンで描いた女の人が、茶色いバッグを提げて笑っています。
裏には、ひらがなで『ままへ ◯◯(娘の名前)』。
「娘が描いた、私です」
娘が『ママのおまもり』と言って、内ポケットにしまってくれた絵でした。
ずっと聞いていたママ友が、絵と私の顔を見比べます。私は絵を受け取りました。
中古と言い張るママ友に聞き返すと、ママ友は立ち尽くしました
ママ友の声が、急に上ずりました。
「ちゅ、中古で買ったのよ」
売った覚えはありません。この絵ごと、ママ友が来た日に消えたのです。
「欲しがったのは、どちらですか?」
ママ友はバッグを肩に提げたまま、その場に立ち尽くしました。
聞いていた他のママ友が、そっと一歩離れます。
やがて財布とポーチを抜き、バッグをベンチに置くと、子どもの手を引いて公園を出ていきました。内ポケットには、今も娘の絵が入っています。
※本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














