「これ、Sじゃないの?」15分後にカフェへ戻ってきた男性客。店員が困っていると、後ろの女性が小さくつぶやいた
15分後に戻ってきた男性客
以前、カフェでアルバイトをしていたころの出来事です。
平日の朝は出勤前のお客様で混み合い、レジの前には列ができていました。
その日、50代くらいの男性が、持ち帰りでMサイズのコーヒーを注文しました。
私はMサイズのカップにコーヒーを注いで渡し、男性はそのまま店を出ていきました。
ところが、15分ほどたったころ、その男性が戻ってきたのです。
男性はレジに来ると、飲みかけのカップをカウンターに強く置きました。
「これ、Sじゃないの?Mで頼んだんだけど」
「申し訳ございません。確認いたしますね」
男性は不満そうに続けました。
「いや、量が少なかったんだよ。Mの料金払ってるんだけど」
「Mサイズのカップでお渡ししたはずなのですが…」
「だから、少ないって言ってるだろ!店長呼んでよ」
だんだん声が大きくなり、周囲のお客様もこちらを気にし始めました。
男性の後ろには、出勤前の会社員が10人近く並んでいました。
カップのサイズは間違っていないはずですが、すでに飲まれているため、最初にどのくらい入っていたのかをその場で確認することはできません。
どう説明すれば納得してもらえるのか分からず、私は困ってしまいました。
後ろに並んでいた女性が気づいたこと
男性はもう一度カップをカウンターに強く置くと、すぐに持ち上げ、私に見せるように差し出しました。
「ほら、これだよ。おかしいと思わない?」
そのとき、カップの底が少し持ち上がり、斜め後ろにいた人から見える向きになりました。
すると、男性のすぐ後ろに並んでいたスーツ姿の女性が、小さな声を漏らしました。
「……あ、底にMって書いてある」
女性はカップの底を見ていました。
私も目を向けると、確かに底には大きく「M」の文字がありました。
男性にも聞こえたようで、一瞬言葉が止まりました。
「……いや、カップはMかもしれないけど、量が少なかったんだよ」
男性はそう言い直しましたが、先ほどまでの勢いは少し落ち着いていました。
私は改めて説明しました。
「カップはMサイズのもので間違いありません。ただ、量については今の状態では確認が難しくて……」
そこへ、奥から店長が出てきました。
私が事情を説明すると、店長は男性に向かって落ち着いた口調で言いました。
「そうでしたか。申し訳ありません。よろしければ、新しくお作りしましょうか」
男性は少し黙ったあと、首を横に振りました。
「……いや、もういいよ」
そう言ってカップを持ち、列の横を通って足早に店を出ていきました。
次にレジへ進んできたのは、先ほどの女性でした。
「Mのラテ、一つお願いします」
そして、注文を終えると小さな声で付け加えました。
「朝から大変でしたね」
「ありがとうございます。お待たせしてすみません」
私が答えると、女性は「いえいえ」と笑ってくれました。
それまで緊張していた私は、その何気ない言葉に少しほっとしました。
男性の言う量の問題が本当はどうだったのか、今となっては分かりません。ただ、あのとき女性がさりげなく声を上げてくれたことは、今でも印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














