「夜分遅くに、申し訳ございません」→「えっ、こんな時間に?」電話をかけた私。苦情を覚悟していたのに、お客さんから返ってきた思わぬ言葉
苦情を覚悟して、謝る言葉を用意した夜
40代になった今でも、思い出すとつい笑ってしまう出来事があります。
若いころ、私はコールセンターで働いていました。当時はまだ職場の体制が整っておらず、毎日のように残業があり、休日に急に呼び出されることも珍しくありませんでした。
ある日のこと。その夜も私は深夜まで会社に残り、仕事を続けていました。
周囲の席はほとんど空いていて、フロアの照明も半分ほど落とされています。
通路の向こうでは、リーダーが一人で書類を片づけていました。
そんな中、私には気がかりな仕事が残っていました。
商品のことで問い合わせをしてくれた男性のお客さんに、まだ返事ができていなかったのです。こちらの都合で、ずいぶん長くお待たせしていました。
その夜のうちに折り返さなければと思っていたものの、すでに深夜です。
「こんな時間に電話したら、絶対に怒られるだろうな…」
そう思いながらも、私はメモ用紙に謝罪の言葉を書き出しました。何を言われても、まずはしっかり謝ろう。そう覚悟を決めて電話をかけたのです。
「夜分遅くに、申し訳ございません」
名乗って用件を伝えると、男性は驚いた様子でした。
「えっ、こんな時間に?」
その声を聞いた瞬間、私は身構えました。
やっぱり怒らせてしまった。メモを握りしめ、次の言葉を待っていると……。
用意した謝罪の代わりに、返ってきたお叱り
「まだ会社にいるの?今まで?」
「はい。遅くなってしまい、申し訳ございません」
私が謝ると、男性は少し強い口調で言いました。
「夜中まで働いてたら体を壊すよ!」
「……えっ?」
思わず言葉に詰まりました。
確かに叱られています。でも、怒っているのは電話の時間や商品のことではなく、私がこんな時間まで働いていることだったのです。
男性は商品について少しだけ不満を口にしたものの、すぐに話を切り上げました。
「続きは明日聞くから。今日はもう帰りなさい」
「えっ、よろしいんですか?」
「いいも悪いもないよ。早く帰って寝なさい」
電話が切れたあとも、私はしばらく画面を見つめていました。
苦情を覚悟していたのに、まさか自分の体を心配されるなんて。
ヘッドセットを外し、すっかり冷めたコーヒーを飲みました。見ず知らずのお客さんに叱られたはずなのに、不思議と胸が温かくなっていました。
すると、通路の向こうにいたリーダーが顔を上げました。
「大丈夫だった?だいぶ怒られた?」
私は思わず笑いながら答えました。
「はい、怒られました。早く帰りなさいって」
「え?」
事情を察したリーダーは、きょとんとしたあと、吹き出しました。
「じゃあ、お客さまのご指示どおりにしようか」
その言葉に、私も笑ってしまいました。
それから職場の体制が整うまでの半年間、帰りそびれそうになる夜には、あの男性の声を思い出すことがありました。
「夜中まで働いてたら体を壊すよ!」
あのときは怒られることばかり考えていましたが、返ってきたのは思いがけない気遣いでした。
今でも、仕事を頑張りすぎそうになると、あの声が頭に浮かびます。
そんなときは小さく笑って、パソコンの電源を落とすのです。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














