「早く帰れって言われた」先払いを了承した男性客が翌日に苦情。だが、店長が本社へ伝えた当日のやり取り
閉店前にお願いした、先払いのお会計
私がキッチンを担当していたのは、ショッピングモール内のレストランです。
注文を受け付けるのはモールの営業終了まで。
店の閉店はその少しあとで、レジを締める作業にも時間がかかっていました。
ある夜、注文受付が終わる直前に、男性が一人で来店しました。
ほかのお客様はすでにおらず、男性が最後のお客様でした。
料理を出してしばらくすると、ホールの若い女性スタッフが男性の席へ向かいました。
「お食事中にすみません。レジを締めたいので、お会計だけ先にお願いしてもよろしいですか?閉店まではゆっくりしていただいて大丈夫です」
「ああ、いいよいいよ。先に払えばいいんだね」
男性は笑顔で応じ、レジで支払いを済ませました。
「ありがとうございます。お食事中にすみませんでした」
スタッフが頭を下げると、男性はそのまま席に戻り、閉店まで食事を続けていました。
キッチンから様子を見ていた私も、快く応じてくれてありがたいなと思っていたのです。
翌日、男性客から思いがけない苦情
ところが翌日、出勤すると店長が事務所で電話を受けていました。
電話が終わってから聞いた話では、相手は昨夜の男性だったそうです。
「昨日そっちで食事したんだけど、あれはないと思うよ」
男性はそう切り出し、「急かされて食べることになった」「早く帰れって言われた」と苦情を訴えたとのこと。
すでに本社にも連絡したというのです。
「えっ……帰ってくださいなんて、一言も言ってないのに」
女性スタッフは困惑した表情で、うつむいてしまいました。
確かに、食事の途中でお会計をお願いしたのは事実です。それを急かされたと感じたのかもしれません。
ですが、先払いについては男性も了承していましたし、早く帰るように促したわけではありません。
あの夜の穏やかなやり取りを思い出すと、私も悔しくてたまりませんでした。
店長は女性スタッフから詳しく事情を聞き、レジの記録も確認しました。そして当日の経緯をまとめ、本社の担当者へ電話をかけたのです。
「お食事中にお会計をお願いしたのは事実です。ただ、事情を説明して、ご本人にも了承いただきました」
店長は一度言葉を区切り、続けました。
「そのあとも閉店までお食事をされています。早く帰ってほしいとは、一度もお伝えしていません」
店長のそばにいた私とスタッフは、その説明を黙って聞いていました。
本社が男性客に伝えた、当日の事実
後日、本社の担当者から店長に連絡が入りました。
担当者は店側からの報告とレジの記録を確認し、男性にも当日の経緯を説明したそうです。
「先にお会計をお願いしたことは事実ですが、お帰りいただくようなご案内はしておりません。その点はお客様にもお伝えしました」
さらに、男性が会計後も閉店まで食事を続けていたことも、店側からの報告として伝えたとのことでした。
担当者によると、その説明を聞いた男性はしばらく黙っていたそうです。
男性がどう受け止めたのかは分かりません。ただ、それ以降、店に苦情の電話がかかってくることはありませんでした。
「よかったな。あのとき、ちゃんと説明しておいて」
店長が女性スタッフの肩を軽くたたくと、彼女は涙ぐみながら笑いました。
私もようやくほっとして、キッチンへ戻りました。
お客様へのお願いは、どれほど丁寧に伝えても、受け取り方が違うことがあります。それでも、起きたことを一つずつ確認し、落ち着いて説明してくれた店長の姿が、今でも印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














