「せっかくの運動会なんだから」校庭で肉を焼き、お酒を飲む保護者たち。だが、先生が火を消すよう求めた理由
応援席まで届いた煙とにおい
よく晴れた日の、子どもの小学校の運動会でのことです。私は家族とシートに座り、一生懸命に競技に取り組む子どもたちを応援していました。
ところが、しばらくすると、どこからか肉の焼けるにおいが漂ってきました。
「ん?何のにおいだろう」
不思議に思って校庭の隅に目を向けると、保護者らしい男女のグループが、小さなコンロを囲んで肉を焼いていたのです。
しかも、何人かは手にお酒の缶を持っていました。
「かんぱーい!」
「せっかくの運動会なんだから、楽しまないとね!」
女性の一人が笑うと、周りの人たちも楽しそうに声を上げました。
しかし、コンロから上がる煙は風に乗って校庭に流れ、肉の焼けるにおいも私たちのシートまで届いてきます。
近くでお弁当を広げていた家族は、子どもの口元をハンカチで押さえながら、困ったように顔を見合わせていました。
やがて、その家族の父親が立ち上がり、グループに声をかけました。
「あの、すみません。煙がこっちまで来てるんですが…」
ところが、返ってきたのは予想外の言葉でした。
「えー、でも隅のほうでやってるんだから、いいじゃない」
「そうそう。別に競技のじゃまはしてないでしょ?」
笑いながらそう返され、父親はそれ以上何も言えず、シートへ戻ってきました。
その間にも、競技を終えた子どもたちがコンロのすぐ近くを通っていきます。それでもグループは、肉を焼く手を止めようとしません。
隣にいた妻も、心配そうにその様子を見ていました。
「子どもたちがあんなに近くを通るのに…。危ないよね」
私も同じことを感じていました。
先生がコンロの前で告げた一言
そのときです。
本部のテントにいた年配の男性の先生が煙に気づいたようで、グループのほうへ歩いてきました。
先生はコンロの前で足を止めると、落ち着いた声で話しかけました。
「すみません。校内では火を使うことも、お酒を飲むことも禁止なんです。すぐに火を消してください」
それまで笑っていた人たちが、先生のほうを振り向きました。
缶を持っていた男性が、不満そうに口を開きます。
「いや、でも……せっかくの運動会ですし…」
すると先生は、近くを歩いていく子どもたちに目を向けました。
「気持ちは分かります。でも、ここは子どもたちが通る場所です。もし火のついたコンロにぶつかったら、大けがにつながりますよ」
男性は何か言いかけましたが、子どもたちの姿を見ると黙ってしまいました。
ほかの保護者たちも顔を見合わせ、先ほどまでの笑い声は聞こえなくなりました。
「……分かりました。片付けます」
男性はしぶしぶ火を消し、周りの人たちも網や道具を片付け始めました。手にしていたお酒の缶も、かばんにしまっていました。
近くのシートにいた家族も、ようやくほっとした表情を見せていました。
やがて煙は消え、校庭には子どもたちの声と、保護者の応援する声が戻ってきました。
ちょうど次は、わが子の出番です。
スタートの合図が聞こえた瞬間、私はシートから立ち上がりました。
「がんばれー!最後まで走れー!」
さっきまで気になっていた煙も、もうありません。
ようやく余計な心配をせず、目の前の子どもの走る姿に集中できました。
せっかくの運動会だからこそ、大人も楽しみたい気持ちは分かります。でも、何より大切なのは、子どもたちが安全に競技を楽しめることなのだと感じた一日でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














