「上の方、いらっしゃいますよね?」何度断っても引き下がらない営業電話。困り果てた私の前に社長が現れた結果
切ったはずの電話がまた鳴る
以前、事務員として働いていた小さな会社での出来事です。
その日の昼、事務所にいたのは私と社長の二人だけ。私は手前の席で仕事をし、社長は奥の席で書類を広げていました。
そんなとき、代表電話が鳴りました。
受話器を取ると、男性が会社名を名乗り、すぐに商品の説明を始めました。
「御社のような会社さんにこそ、ぜひ聞いていただきたくて」
どうやら営業電話のようです。私は話の切れ目を待って、お断りしました。
「せっかくですが、うちでは必要ありませんので」
ところが、男性は構わず説明を続けます。こちらが断っていることなど、まるで聞こえていないようでした。
しばらくして、私はもう一度伝えました。
「申し訳ありませんが、お電話切らせていただきます」
そう言って受話器を置き、ようやく仕事に戻ろうとした、その数秒後。
また電話が鳴りました。
表示された番号を見ると、先ほどとまったく同じです。
恐る恐る受話器を取ると、聞き覚えのある声がしました。
「どうも、先ほどの者です。お話の途中でしたので」
男性は何事もなかったかのように、再び商品の説明を始めました。
私は困りながらも、できるだけ丁寧に対応しようとしました。
「先ほども申し上げましたが……」
ところが、言い終わらないうちに男性が声をかぶせてきたのです。
「ですから、あなたじゃ話にならないんですよ。上の方、いらっしゃいますよね?」
その言葉に、思わず黙ってしまいました。
私には決定権がないと、最初から決めつけられているようでした。こちらは何度も必要ないと伝えているのに、まったく取り合ってもらえません。
「お取り次ぎはいたしかねます。失礼いたします」
私はそう告げて、再び電話を切りました。
しかし、間もなくまた同じ番号から電話がかかってきたのです。
鳴り続ける電話を前に、私は受話器を取ることさえためらってしまいました。
最後に受話器を取った社長の一声
そのとき、奥の席で椅子を引く音がしました。
社長が立ち上がり、私の席まで歩いてきたのです。
「代わるよ」
社長はそう言うと、私の机の横に立って受話器を取りました。
私は座ったまま、その様子を見守っていました。
社長は相手の話を少し聞いてから、落ち着いた声で答えました。
「はい、私が社長です。担当の者がお断りしたとおり、うちでは必要ありません」
その言葉を聞いた瞬間、私は思わず社長の顔を見上げました。
社長は私が断ったことを、そのまま会社の返事として受け止めてくれたのです。
男性が何と返したのかは聞こえませんでしたが、社長は少し間を置いてから続けました。
「何度お電話いただいても、お答えは同じです。失礼いたします」
声を荒らげることもなく、社長は静かに受話器を戻しました。
さっきまで何度も鳴っていた電話が止まり、事務所に静けさが戻ってきました。
「次から、しつこいのが来たら、すぐ呼んで」
そう言って奥の席へ戻っていく社長に、私は笑ってうなずきました。
あれほど強引だった営業電話も、それきりかかってくることはありませんでした。
何よりうれしかったのは、社長が私の対応を否定せず、きちんと尊重してくれたことです。
電話に出ていたときの嫌な気持ちが、少しずつ薄れていくのを感じました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














