「なんか、融通が利かないな」ホテルで20分以上も続いた押し問答。だが、男性客が予約記録を見て黙った理由
旅行初日のフロントで始まった押し問答
数年前の休日、私は旅行先のホテルに昼すぎに到着しました。
チェックインが始まったばかりのフロントには、すでに列ができています。
荷物を足もとに置いて並んでいると、すぐ前にいた年配の男性客が、若い女性スタッフと何やら話し込んでいました。
「予約するときに、部屋を指定したはずなんだけど」
男性はカウンターを指で軽くたたきながら、スタッフに確認を求めています。
「確認いたしますので、少々お待ちください」
スタッフはパソコンで予約内容を調べましたが、男性の希望とは違うようでした。
「申し訳ございません。今回のご予約には、お部屋の指定が入っていないようです」
すると、男性は不満そうな顔をしました。
「いや、ちゃんと指定したよ。オレは何度もここに泊まってるんだから、希望した部屋にしてくれよ」
スタッフは落ち着いた口調で説明します。
「ご希望は承りました。ただ、予約時にお部屋を指定された記録がないため、確約されていたお部屋としてはご案内できないんです」
しかし、男性は納得しません。
「なんか、融通が利かないな」
それからも男性は同じ主張を繰り返し、押し問答は20分以上に及びました。
私のうしろに並んでいた家族連れの父親は何度も腕時計を確認し、カップルも顔を見合わせています。
私も、せっかくの旅行なのにチェックインが進まず、もやもやしていました。
予約記録を見せられた男性が黙り込んだ理由
そんな中、男性が再び口を開きました。
「前に泊まったときだって、部屋を指定してたはずだよ」
スタッフは過去の宿泊記録も確認し、しばらく画面を見つめていました。
そして、パソコンの画面を男性のほうへ向け、静かに説明しました。
「こちらが今回の予約内容です。お部屋の指定は入っていません」
男性は画面をのぞき込みました。
「いや、でも、前は…」
するとスタッフは、さらに説明を続けました。
「以前のご予約も確認しましたが、そちらにもお部屋を指定された記録はありませんでした」
私の位置から画面の文字までは見えませんでしたが、スタッフの説明ははっきり聞こえました。
男性は何度も宿泊していることを強調していましたが、少なくともホテル側の記録には、部屋を指定して予約したという情報が残っていなかったのです。
スタッフは続けました。
「お部屋のご希望を伺うことはできますが、指定して予約された場合とは異なります。本日はご予約の内容に沿ってご案内いたします」
それまで強い口調で話していた男性は、急に黙り込みました。
耳を赤くして画面から視線を外し、それ以上は何も言い返しません。
そして、黙って鍵を受け取ると、うしろの列を振り返ることもなく、足早にエレベーターへ向かっていきました。
うしろの列から小さなため息が漏れ、家族連れの母親もやれやれという表情を浮かべていました。
「大変お待たせいたしました」
スタッフは列に向かって深く頭を下げました。
ようやく私の番になり、カウンターに荷物を置いたときには、思わずほっとしました。
うしろではカップルが地図を広げ、これからの行き先を相談し始めています。
希望する部屋に泊まりたいという気持ちは分かります。ただ、希望を伝えることと、予約で部屋を確約してもらうことは別の話です。
長いやり取りにもかかわらず、最後まで冷静に記録を確認し、説明を続けたスタッフの姿が印象に残りました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














