「ばあば、通路で写真とっちゃだめって先生言ってたでしょ」発表会で注意を無視した祖母。だが、孫の一言に黙り込んだ瞬間
発表会の通路に立った祖母
子どもが通う幼稚園では、毎年冬になると、公民館のホールを借りて発表会が開かれます。
劇やダンスなど、子どもたちの頑張る姿を楽しみにしていた私は、その日も早めに会場へ向かい、前のほうの通路側の席を取りました。
受付でもらったプログラムには、「通路での撮影はご遠慮ください」と書かれています。
通路に立って撮影すると、後ろの席の人たちが舞台を見られなくなってしまうからです。
ところが、劇が始まってまもなく、私のすぐ後ろの通路にカメラを持った女性が立ちました。
見覚えのある顔でした。
知り合いのママのお母さんです。その知り合いは、母親のすぐ横の通路側の席に座っていました。
祖母はカメラを構えると、舞台に向かって身を乗り出しました。
後ろの席では、保護者たちが首を伸ばしたり、体を左右に傾けたりしています。
祖母の体で舞台の中央が見えなくなっていたのです。
困った顔をした知り合いが、母親の袖をそっと引きました。
「お母さん、ちょっと。席に戻ってよ」
「いいから、今撮ってるんだから」
祖母は娘の手を払うと、またカメラを構えました。
孫の出番が近づくと、ますます前のめりになります。知り合いも困り果てた様子で、私は見ているだけで落ち着かなくなりました。
孫の一言に、祖母が言葉を失った
曲の合間に、私は思い切って後ろを振り返りました。
「あの、すみません。通路での撮影はだめみたいですよ」
すると祖母は、眉を寄せてこちらを見ました。
「孫の晴れ舞台なのよ。ちょっとくらい、いいじゃないの」
「でも、後ろの方が見えなくなっているので……」
「もう、今いいところなんだから」
そう言って祖母は、再びカメラを舞台に向けました。
後ろからは小さなため息が聞こえてきます。知り合いのママも注意していたのに、どうしたらいいのだろう。私もそれ以上は言えず、前を向くしかありませんでした。
やがて最後の演目が終わり、子どもたちが先生に連れられて客席に戻ってきました。
すると、園の制服を着た女の子が、通路に立っていた祖母のところへ駆け寄りました。
そして祖母の服を引っぱり、少し大きな声で言ったのです。
「ばあば、通路で写真とっちゃだめって先生言ってたでしょ」
「えっ? ああ、でもね…」
祖母が言い訳をしかけると、女の子は後ろの席を振り返りました。
「うしろのお友だちのママが、見えなくなっちゃうんだよ」
「あら……そうね」
祖母は口を開きかけましたが、それ以上は何も言いませんでした。
近くから小さな笑い声が聞こえます。私や知り合いが何を言っても聞かなかった祖母が、孫の言葉にはすっかり困った顔になっていました。
祖母は顔を赤くしてカメラを下ろし、肩をすぼめながら黙って席に戻りました。
その横で、知り合いのママが私に小さく頭を下げます。
「ごめんね、うちの母が……」
「ううん、大丈夫だよ」
私がそう返すと、女の子は少し得意そうに胸を張りました。
大人が何度注意しても聞いてもらえなかったのに、孫の素直な一言で祖母の態度が変わるとは。
子どもが教わったことをきちんと覚えていた姿が、何より印象に残った発表会でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














