「若いんだから、言われる前に自分で気づかなきゃダメだろう」店員を叱った常連客。だが、隣の男性の指摘に言葉を詰まらせた
窓ぎわの席から呼びつける常連客
以前、私がアルバイトをしていたのは、セルフサービスの飲食店でした。
お客様はレジで注文し、料理ができたら自分で受け取りに来る仕組みです。そのため、店員が客席まで行くことはめったにありませんでした。
夏のよく晴れた昼のことです。
店の奥にあるレジに立っていると、窓ぎわの席に座っていた常連の男性客が、こちらに向かって手招きをしていました。
レジからいちばん遠い席です。男性のすぐ横には開いたままのカーテンがあり、窓から差し込む日差しが顔に当たっていました。
男性はまぶしそうに顔をしかめながら、私に声をかけました。
「ちょっと、カーテン」
言いたいことは分かりましたが、レジを離れてよいものか迷っていると、男性が急に声を張り上げたのです。
「おい、聞こえないのか。カーテン閉めてくれって言ってるんだよ!」
周囲のお客様も驚いたように顔を上げました。
さらに男性は、不機嫌そうな口調で続けます。
「若いんだから、言われる前に自分で気づかなきゃダメだろう」
私は返す言葉に困りました。レジから離れた席の日差しまで気を配るのは、さすがに難しいことです。
それでも、これ以上大きな声を出されるのも困ると思い、男性の席へ向かいました。
隣の席から飛んできた思わぬ一言
席に着くと、男性は椅子に深く腰かけたまま、あごでカーテンを示しました。
「早くしてくれ。料理が冷める」
「お待たせいたしました」
私がカーテンに手を伸ばした、そのときでした。
隣の席で新聞を読んでいた年配の男性客が、新聞をたたんで顔を上げたのです。
そして、常連客の肘のあたりを指さしながら言いました。
「あんたの肘のとこにあるじゃないか」
常連客は一瞬、きょとんとした顔をしました。
私も視線を向けると、カーテンの端は常連客の肘のすぐ横に下がっています。座ったままでも、少し手を伸ばせば届く距離でした。
年配の男性は、続けて言いました。
「座ったまま閉められるだろう。若い人は、あっちで仕事があるんだよ」
「いや、その……まぶしくて、つい……」
先ほどまで大きな声を出していた常連客は、急に声が小さくなりました。
通路の向こうから小さな笑い声が聞こえると、男性は気まずそうに目をそらし、それ以上は何も言いませんでした。
私はカーテンを閉め、「失礼いたしました」と頭を下げました。
すると年配の男性が、新聞を広げ直しながら、小さな声で言ってくれました。
「ご苦労さん」
その一言に、張り詰めていた気持ちが少し和らぎました。
レジに戻ってから窓ぎわを見ると、常連客は黙って料理を食べていました。隣の男性も、何事もなかったように新聞を読んでいます。
ほんの少し手を伸ばせば済むことだったのに、あれほど大きな声で呼ばれるとは思いませんでした。
それだけに、隣のお客様がかけてくれた言葉が、今でも印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














