「本当に信じられない」サラダに虫が入っていたと怒る母親。だが、謝罪後も続く態度に娘がかけた言葉とは
謝ることしかできなかった新人のころ
カフェレストランでホール係のアルバイトを始めて、まだ日が浅かったころのことです。
その日のランチどき、母親と成人した娘さんが来店し、ふたりともランチセットを注文しました。
私がサラダを届けてしばらくすると、母親が手を挙げ、険しい表情で私を呼び止めました。
「ちょっと、これ見て」
母親が指さした器をのぞくと、レタスの葉の陰に小さな虫がいました。
「大変申し訳ございません」
私は慌てて頭を下げました。
店側の落ち度であり、お客様が不快に思うのも当然です。
ただ、アルバイトを始めたばかりの私には、どう対応すればよいのか分かりませんでした。
先輩にその場の対応をお願いし、急いで店長を呼びに行きました。
店長はあらためて謝罪し、サラダを新しいものに交換したうえで、代金も返金しました。
これで少しは落ち着いていただけるだろう。私はそう思っていました。
怒りが収まらない母親に、娘さんがかけた言葉
ところが、店長がテーブルを離れたあとも、母親の怒りは収まりませんでした。
「本当に信じられない」
最初はため息まじりだった声が、次第に大きくなっていきます。
「虫よ、虫。サラダに入ってたの。もう来ないから、こんな店」
その声は店の奥まで響き、周囲のお客様も気にしている様子でした。
さらに困ったのは、母親が私をにらむようになったことです。
私が料理を運んで横を通るたびに、鋭い視線が向けられます。
もちろん、店のミスで不快な思いをさせてしまったことは申し訳なく思っていました。
それでも、サラダを作ったわけではない私に何度も厳しい視線が向けられると、次第にそのテーブルの近くを通るのが怖くなっていました。
何度目かに、お盆を持って横を通りかかったときのことです。
母親がまた私をにらみました。私は少し離れたところで、思わず足を止めました。
すると、娘さんが母親の腕にそっと手を置き、静かに声をかけたのです。
「お母さん、もう交換も返金もしてもらったでしょ」
「だって…」
「この人が作ったわけじゃないよ」
娘さんは落ち着いた口調で、さらに続けました。
「ずっとにらむの、やめて。まわりの人も、見てるよ」
その言葉に、母親は何も言い返しませんでした。
ゆっくりと店内を見回すと、近くの席のお客様たちが食事の手を止め、こちらに目を向けていました。
母親はそれに気づいたのか、うつむいて黙り込みました。
それからは、私がそばを通っても、もうにらまれることはありませんでした。
やがて会計を終えると、母親は先に店を出ていきました。
娘さんは帰り際に振り返り、私に小さく頭を下げました。
「ごめんなさい。いやな思いをさせて」
私は首を横に振り、同じように頭を下げました。
店側に落ち度があったことは変わりません。それでも、娘さんが私の立場まで気にかけてくれたことが、ありがたく感じられました。
私は気持ちを切り替え、次のお客様のテーブルへ向かいました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














