「玄関で、マフラーの房がからまったの」義父の模型を落とし、私に謝罪を迫る義母。だが、マフラーを見て慌てた姿
年末の義実家の玄関で
年末の義実家の玄関で、義父の船の模型が落ちました
12月の日曜の昼、夫と年末のあいさつに義実家を訪れました。
夫は手土産を買い忘れたことに気づき、着くなり駅前へ戻りました。
義母は台所から『上がって』と言うだけで、玄関に出てきません。
台所の入口からは、玄関の飾り棚が見える間取りでした。
私はマフラーを巻いたまま飾り棚の前を通り、ホールの奥のコート掛けにコートとマフラーを掛けました。
台所へ行くと、義母は『お茶を入れておいて』と、はたきを持って出ていきました。
お茶を入れていると、玄関で大きな音がしました。
駆けつけると、棚の前の床に木の帆船の模型が倒れ、帆柱が1本折れていました。
義父が10年かけて組んだ船です。
はたきを手に、義母が私に言いました。
「来たとき、あなたが棚にぶつかったの。」
義母は、自分が触る前に船が落ちたと言いました
2階から下りてきた義父に、義母は続けます。
「ぶつかって、船が端にずれてたの。」
「私が触る前に、落ちちゃった。」
義父は、折れた帆柱だけを拾い上げ、肩を落としました。
ほかの帆柱まで折らないよう、船は床に置いたままです。
義母は、義父に謝りなさいと私に言いました
義母の目が、私に戻りました。
「お父さんに、謝りなさい。」
棚の前を通ったのは本当で、コートの裾が触れなかったとは言い切れません。触れていない証拠も、どこにもありません。
義父は、義母の言うことを疑ったことがない人です。帆柱を握ったまま、うなずいています。10年の船を前に、私は怖くて、ひと言も返せませんでした。
「お父さんに、謝りなさい」
義母は、マフラーの房を台所から見たと言いました
義父が、空の棚の奥に目をやりました。船はいつも、棚の奥に置いてあります。
義母は、義父に一歩寄りました。
「玄関で、マフラーの房がからまったの。」
「台所から、この目で見てたんだから。」
長い房が帆にからまり、奥の船を引っぱったと言うのです。私が着いたとき、義父は2階、夫は駅前。あのときの玄関を知る人は、ほかにいません。
私は、胸の前で握っていた両手を、ゆっくりほどきました。
私は、端も房もない輪のマフラーを広げました
私は、玄関ホールの奥のコート掛けから自分のマフラーを取り、2人の前で両手で広げました。
「このマフラーは、輪になっています。」
からし色の太い毛糸でできた、頭からかぶるスヌードのような輪のマフラーです。端も房も、はじめからない形です。
首にぴったり沿う短い輪で、胸より下には垂れません。この日巻いてきたのは、この1本だけ。台所から見ていたのなら、義母が見たのはこの輪のはずです。
義母は、はたきを背中のうしろへ回しました
義母が、早口になりました。
「じゃあ、マフラーの端が当たったのよ!」
「ぐるりと一周、つながっています。」
義父が、義母から半歩はなれ、帆柱を胸に引き寄せました。
義母が、手のはたきを背中のうしろへ回しました。腰のうしろから、白い布の房がのぞいています。
『……はたきの房が、帆に引っかかったの』。帆にからまった房は、義母の手のはたきのものだったのです。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














