タイプの男性「連絡先。君にだけ渡すね」→私「え、嬉しい」バイト先での憧れの男性。だが、社員の一言で甘い夢が覚めた
バイト最終日のメモ
高校生の頃にバイトしていたコンビニに、半年だけ働きに来た男性がいた。当時二十四歳で、警察官を目指して勉強中の、私にとってどタイプの人。
話も弾んで尊敬できて、いつしか憧れの男性になっていた。
その彼の最後の出勤日。レジ締めのあとで、彼がそっとメモを渡してきた。
「連絡先。君にだけ渡すね」
「え、嬉しい」
「うん。また話そう」
半年も一緒に働けないと分かっていたぶん、その一言が嬉しくて、私は飛び上がりそうになった。
浮かれていた数分間
更衣室で制服を脱ぎながら、私の頭はもう次の妄想でいっぱいだった。
今度ご飯に誘ってみよう。どんな店がいいかな。連絡先をくれたってことは、きっと脈ありだ。心臓がずっと早鐘を打っていた。
一緒に働いていた同期に、思わず打ち明けた。
「私、連絡先もらっちゃった。君にだけって」
「えー、いいなあ。脈ありじゃん」
そうだよね、と二人で盛り上がる。そんな浮かれた数分間を、レジにいた社員さんの何気ない一言が打ち砕いた。
「彼、婚約してるよ」
「……えっ、婚約、ですか?」
「うん、来年あたり結婚するって。若いのにしっかりしてるよね」
隣の同期も、気まずそうに目を逸らした。
「……あー、これは、うん」
さっきまでの高揚が、音を立てて引いていった。
君にだけ、の意味が、まるきり違って聞こえる。あんなに舞い上がっていた自分が、急に恥ずかしくなった。
いい勉強代だった夕暮れ
帰り道の空は、やけに赤かった。思わせぶりだなあ、と一人でぼやきながら自転車を漕ぐ。
手の中のメモを、捨てようか迷って、結局ポケットにしまった。
店を出るとき、同期が背中を叩いてくれた。
「まあ、いい思い出ってことで」
「ほんとだよ、人騒がせな男だなあ」
口ではそう言いつつ、二人で笑ってしまった。でも、ペダルを踏むうちに、だんだん気持ちが切り替わってきた。
もし何も知らずに誘っていたら、婚約者のいる人を本気で好きになっていたかもしれない。手前で気づけたぶん、傷は浅くて済んだのだ。
「うん、今のうちでよかった」
赤い空に向かって、つぶやいてみる。あの男性は警察官を目指して、ちゃんと自分の道を進んでいくのだろう。
それはそれで、応援したい気持ちもあった。私は私で、次に進めばいい。
甘酸っぱくてほろ苦い、若い日の出来事。落ち込んだのは一日だけで、翌朝にはもう、すっかり前を向いていた。
あのメモは、淡い初恋の証として、しばらく机の引き出しにしまっておいた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














