「あの人へのやり方、さすがにおかしくないですか」職場の人間関係で感じた違和感。だが、上司の言葉に退職を決意
見て見ぬふりの職場
社会人になって最初に配属された部署には、妙な空気が流れていた。
誰もが表向きは仲良く振る舞うのに、一人の男性社員だけが、じわじわと軽んじられていた。
穏やかで、腰の低い人だった。だからよけいに、周りは扱いやすい相手だと思っていたのだろう。
会議の日程が彼にだけ伝わらない。
頼まれた資料の締め切りが、後からこっそり早められている。仕組まれたつまずきが積み重なり、彼の評価だけが静かに下がっていった。
耐えかねて、私は直属の課長に訴えた。
「あの人へのやり方、さすがにおかしくないですか」
返ってきたのは、耳を疑う本音だった。
「そんなのは知っている、みんな割り切ってるんだよ」
そういう存在が一人いれば、残りはまとまるのだと、課長は悪びれもせず言った。彼は自分のミスを気にして、いつも皆に手土産を配る優しい人だったのに。
「でも、あの人だって一生懸命やっています」
「一生懸命かどうかは関係ないんだよ。組織ってのは、そういうものなんだ」
私が食い下がっても、課長はまるで取り合わなかった。
「あの人がいるおかげで、俺たちは楽なんだよ」課長はそう言って笑った。
私はその笑顔に、背筋が寒くなった。
犠牲を失った職場
私はその職場に見切りをつけ、ほどなく退職した。
誰かを犠牲にして成り立つ場所に、居続ける気にはなれなかった。
数年後、退職した先輩と連絡を取る機会があった。
あの部署の近況を尋ねると、思いがけない答えが返ってきた。
「あの優しい人ね、あなたのあと、しばらくして転職したのよ」
犠牲になっていた人がいなくなり、部署は一気に回らなくなったという。
「今まで押し付けてたミスが、全部自分たちに返ってきてね」
隠れていた実力不足が露わになり、納期は遅れ、取引先の信用も落ちた。
真っ先に問われたのは、あの課長の責任だった。
課長は必死に言い逃れをしたが、周りはもう誰も味方しなかった。
顔面蒼白で頭を下げる姿を、部下たちは黙って見ていたそうだ。まとまっていたはずのチームは、犠牲を失った途端にばらばらになった。
「あの人がいなくなって、みんな初めて自分の仕事と向き合わされたのよ」
「割り切って人を切る職場なんて、切る相手がいなくなれば終わりよね」先輩は静かにそう言った。
犠牲の上に築いた平和は、その一人が去っただけであっけなく崩れた。
人を切って回していた側が、最後は自分の番を迎えたのだった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














