「今日の売上、どうなってる?」売上ばかり気にしていた私。だが、常連客の言葉に思わず手が止まった瞬間
毎日、数字を書いて出していた
コンビニで働いていた頃、私はいつも数字に追われていました。人通りの多い店で、夕方になるとレジの列がなかなか途切れません。品出しは後回しになり、休憩に入る時間も日によってずれていました。
そんな忙しい日でも、上の人から確認されることがあります。
「今日の売上、どうなってる?レジの数字、忘れずに出してね」
怒鳴られるわけではありません。相手には相手の仕事があり、数字を確認する必要があることも分かっていました。
それでも、疲れている日に何度も言われると、少しずつ気持ちが沈んでいきます。
「はい、あとでまとめます」
そう返しながら、心の中では「今日もこれだけ動いているのに、まだ足りないのかな」と思っていました。
ある日の夕方も、レジの前には長い列ができていました。次々と商品を通し、袋を渡し、また次のお客さんを呼ぶ。その繰り返しです。
そのとき会計に来たのが、よく顔を見る常連のお客さんでした。
「今日も混んでるねえ。大変だ」
私は苦笑いしながら、「ほんと、今日はずっとこんな感じなんです」と答えました。
会計を終えて袋を渡すと、その人は少し笑って言いました。
「でも、いつ来ても早いよね。こんなに並んでるのに、ちゃんと回ってるじゃない」
思わず、その人の顔を見ました。
「……そう見えます?」
「見える見える。こっちは助かってるよ」
それだけ言うと、その人は袋を提げて帰っていきました。
見てくれている人もいるんだと思った
次のお客さんを呼びながら、胸の奥に引っかかっていたものが少しだけほどけるような気がしました。
隣のレジにいた同僚も会話を聞いていたらしく、小さな声で言いました。
「ああいうの、ちょっと嬉しいですよね」
「うん。なんか……今日、もう少し頑張れそう」
自分でも驚くくらい、素直にそう言えました。
もちろん、その一言で仕事が楽になったわけではありません。次の日も数字は出しましたし、忙しい時間にはレジの列もできました。
それでも、それまでは「数字が足りているか」ばかり気にしていた私が、「ちゃんと目の前のお客さんに届いている仕事もある」と思えるようになりました。
「ありがとうございました。またお越しください」
以前より少しだけ、お客さんの顔を見て言えるようになった気がします。
あの常連のお客さんは、きっと深い意味で言ったわけではありません。ただ、いつも店を利用していて、目にしたことを口にしてくれただけなのでしょう。
それでも、疲れているときほど、そんな何気ない一言が残ることがあります。
あの店を離れてずいぶん経った今でも、混んでいるレジを見ると、ときどきあの日の「こっちは助かってるよ」という言葉を思い出します。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














