「試食がないと味が分からないわ」困っていた女性。だが、私が引き出しから出したカードで状況が一変
「味が分からない」と言われて、返事に困った
デパートの催事場で、お菓子の売り場に立っていたころの話です。
私の担当する売り場は、箱入りのお菓子を並べた小さなスペースでした。
隣の売り場では試食を出していて、通りかかったお客さまが足を止めています。一方、私の売り場には試食がありません。そのため、「どんな味ですか」と聞かれることはよくありました。
ある日、年配の女性が箱を一つずつ手に取って見ていました。しばらくして、少し困ったような顔で言われました。
「試食がないと、どんなお菓子か分からないわね」
聞けば、甘いものがあまり得意ではない方への贈り物を探しているとのことでした。
試食をご用意できないことを謝ったものの、それだけでは何の参考にもなりません。どう説明しようか迷ったところで、朝の準備中に見たものを思い出しました。
売り場の引き出しには、それぞれのお菓子の味や食感、原材料、日持ちなどをまとめた商品案内のカードが入っていたのです。
私は一枚取り出して、女性から見やすい位置に置きました。
「試食はないのですが、味の特徴はこちらに書いてあります。よかったらご覧ください」
カードを見ながら、二つの商品を選んだ
女性はカードを手に取り、ゆっくりと目を通していました。
「これは甘さ控えめなのね。こっちは少ししっとりしているのか」
箱とカードを何度か見比べたあと、二つの商品を選ばれました。
「これなら選びやすいわ。ありがとう」
そう言って会計を済ませたあと、女性は商品案内のカードについて「一枚いただいてもいい?」と聞かれました。
持ち帰り用にも用意されていたものだったので、私はそのままお渡ししました。
翌朝、開店準備をしながら、私は残っていたカードを取り出しました。それまでは引き出しにしまっていましたが、数枚をテーブルの手前に置き、誰でもすぐ読めるようにしたのです。
隣の売り場の方も、それを見て「こういう案内が見えるところにあると分かりやすいね」と話していました。
それからは、声をかける前にカードを読んでから商品を選ぶ方も増えました。もちろん、試食と同じように味が分かるわけではありません。それでも、「甘さは控えめです」「サクッとした食感です」といった情報があるだけで、選ぶときの手がかりにはなります。
伝えるためのものは、最初から売り場に用意されていました。私はただ、それを引き出しにしまったままにしていたのです。
今でも贈り物のお菓子を選ぶときには、見た目だけではなく、箱の裏や商品説明まで読むようになりました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














