「じゃあ電車で行くからいいわ」何度も送迎を頼んできた母親。県外大会で費用の負担を伝えると返ってきた言葉
何度も続いた「今日もお願い」
週末になると、私は息子を乗せてチームの練習へ車を出していた。
40代になって土曜の朝に疲れが残ることもあったが、息子と話しながら向かう時間は嫌いではなかった。
そんな中、同じチームの子のお母さんから、たびたび送迎を頼まれるようになった。
「今日も、うちの子一緒にお願いしていいですか?」
最初のころは、私も気にしていなかった。
「いいですよ。乗ってください」
子ども同士も仲がよく、車の中では楽しそうに話している。それならいいかと思っていた。
ところが、送迎は月に何度も続いた。
「今日もお願いしていいですか? 同じところまで行くし」
「…はい、大丈夫ですよ」
何度乗せても、きちんとお礼を言われた記憶はほとんどない。
断るほどのことでもないと思う一方で、「ついでなんだから」と当然のように頼まれている気がして、少しずつ引っかかるようになった。
秋になり、県外で開かれる大会の案内が配られた。
朝早く出発し、高速道路を使っても二時間ほどかかる会場だった。
すると、そのお母さんから連絡が来た。
「大会の日も乗せてもらえますか?朝からお願いしたいんですけど、帰りも一緒だと助かります」
私はすぐには返事をしなかった。
いつもの練習とは距離も費用も違う。今回は先にきちんと話しておこうと思った。
遠いからこそ、先に伝えた条件
次の練習の日、私はそのお母さんに声をかけた。
「大会の日の送迎なんですけど、今回はかなり遠いですよね」
「そうですね」
「高速代もガソリン代もかかるので、乗る家庭で費用を分けてもらえるなら、一緒に行けます」
そのお母さんは少し黙ったあと、眉を寄せた。
「え、お金かかるんですか?」
「普段の練習とは距離が違いますからね。今回は全部うちで負担するのはちょっと厳しくて」
すると相手は小さく息を吐いた。
「…じゃあ電車で行くからいいわ」
少し不機嫌そうな声だったが、私はそれ以上言わなかった。
「わかりました」
その夜、私は妻にその日のことを話した。
「費用を分けてもらえたら乗せるって言ったら、『じゃあ電車で行くからいいわ』って言われたよ」
妻は少し驚いたあと、「そっか」とうなずいた。
「でも、無理して引き受け続けるより、そのほうがいいんじゃない?」
「うん。言えてよかったと思う」
大会当日は、費用の負担を了承してくれたほかの2家族の子どもを乗せて出発した。そのうち一人の父親も同乗し、帰りのサービスエリアで缶コーヒーを差し出してくれた。
「今日は助かりました。運転、お疲れさまです」
「いえいえ。子どもたちも楽しそうでしたし」
すると、その父親が少し苦笑いした。
「実はうちも前に何度か、『ついでに乗せて』って頼まれたことがあって。ああいうの、断りづらいですよね」
「ああ……うちだけじゃなかったんですね」
翌週から、そのお母さんに送迎を頼まれることはなくなった。
だからといって、子ども同士の関係まで変わったわけではない。練習場では、息子とその子がいつものように並んで歩いていた。
言い争ったわけでも、相手を責めたわけでもない。ただ、負担に感じていることを曖昧にせず伝えただけだった。
それでも私にとっては、十分な区切りになった。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














