「そんなの窓口で言われなかったぞ!」特急券なしで乗ろうとした夫婦。だが、駅員が丁寧に対応した結果
特急のドアの前で始まった押し問答
夕方、私は駅のホームで、次の特急を待つ列の先頭に並んでいました。
一本前の特急が停まっていて、すぐ近くのドアの前では、年配の夫婦と駅員さんが何やら話をしていました。
二人はそれぞれ乗車券を手にしていました。
駅員さんは切符を確認すると、丁寧に説明しました。
「お客様、こちらの特急にお乗りになるには、別に特急券が必要なんです」
すると、夫が不満そうに声を上げました。
「えっ?そんなの窓口で言われなかったぞ!」
「そうよ。そんな説明、聞いてないわよね」
妻も横から口を挟みます。
駅員さんは落ち着いた声で答えました。
「申し訳ありません。特急券は別にお買い求めいただく必要がありまして…」
しかし、夫は納得できないようでした。
「でも、ちゃんと切符は買ったんだぞ。これじゃダメなのか?」
そう言って、手にした乗車券を駅員さんに見せています。
私も最初は、何か切符の確認に時間がかかっているだけなのかと思っていました。
ところが、夫婦は特急券が必要だと聞いても、なかなか引き下がろうとしません。
そして突然、夫が妻の手を引き、開いているドアへ体を向けたのです。
「もういい、行くぞ」
そのまま乗り込もうとしているように見え、私は思わず二人のほうを見つめました。
駅員さんがドアの前で伝えた一言
その瞬間、駅員さんが二人の前に回り、声をかけました。
「お客様、少々お待ちください!」
夫婦が足を止めると、駅員さんは続けました。
「特急券をお買い求めいただいてから、ご乗車をお願いします」
夫は何か言いたそうにしていましたが、駅員さんはホームの奥を指さしました。
「あちらの券売機で特急券をお買い求めいただけます」
そして、こう付け加えたのです。
「次の特急は10分後に参ります。今からでも十分間に合いますよ」
その言葉に、妻が券売機のほうを振り返りました。
「ねえ、次のでいいんじゃない?」
夫はしばらく黙っていましたが、やがてドアから離れました。
二人はキャリーケースを引きながら、券売機のほうへ歩いていきました。
駅員さんもそれ以上は何も言わず、いつもの穏やかな口調で案内に戻っていました。
やがて一本前の特急が発車し、ホームが少し静かになりました。
それから数分後、後ろのほうから聞き覚えのある声がしました。
「これで、ちゃんと乗れるんだな」
振り返ると、先ほどの夫婦が列の後方に並んでいました。
夫の手には、乗車券と重ねた二枚の特急券がありました。
「さっきの人が、10分後って言ってたものね」
妻がそう答えると、夫も小さくうなずきました。
まもなく、次の特急が到着するというアナウンスが流れました。
ホームの先では、あの駅員さんが列車の案内を続けています。
ただ乗車を止めるのではなく、どうすれば乗れるのかまで伝えた駅員さん。
強引に乗ろうとした夫婦にも最後まで落ち着いて対応していた姿が、今でも印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














