「この猫ちゃん、うちの台所によく来るんです」赤い首輪にメモを結んだ翌日、訪ねてきた飼い主さんの言葉
夕方になると現れる茶トラ
我が家の台所には勝手口がある。ある夕方、焼き魚の煙を逃がそうと戸を開けていると、足もとを何かがすり抜けた。
驚いて振り向くと、赤い首輪をつけた茶トラが、流しの下にちょこんと座っていた。
「お前、どこから来たんだ?」
声をかけると、猫は短く鳴くだけ。その日から、週に2度ほど夕方になると姿を見せるようになった。
ある日は、皿に移したサンマに手を伸ばしかけた。テーブルの端に前足がかかったので、僕は慌てて皿を持ち上げた。
「これはダメだぞ」
猫は床へ降りると、しっぽを揺らしながら勝手口から出ていった。
次の日曜、ゴミ出しのついでに隣のご主人へ聞いてみた。
「赤い首輪の茶トラ、見たことありませんか?最近、うちの台所まで入ってくるんです」
「ああ、あの子か。塀の上を歩いてるのは見るけど、どこの猫だろうなあ」
首輪をしているので飼い猫なのだろうとは思ったが、どこの家の猫なのかは分からない。僕は少し困っていた。
首輪につけた小さなメモ
張り紙をしても、飼い主の目に入るとは限らない。そこで僕は、猫の首輪に短いメモをつけてみることにした。
小さな紙に、こう書いた。
「この猫ちゃんが、うちの台所によく遊びに来ます。角の白い家より」
その夕方、いつものようにやって来た猫の首輪に、細く折った紙をそっと結んだ。猫はしばらく僕の足もとにいたあと、そのまま外へ出ていった。
翌日の夕方、玄関のチャイムが鳴った。
そこには、あの茶トラを抱いた60代くらいの女性が立っていた。
「角の白いお宅って、こちらですか?」
「はい、そうです」
「首輪のメモを見ました。まさか台所にまで入っていたなんて…ご迷惑をおかけしました」
女性は申し訳なさそうに頭を下げた。
「人懐っこい子ですね」
そう言うと、女性は猫の頭をなでながら苦笑した。
「つい外に出してしまっていて。これからは家の中で飼います」
女性は帰り際、手作りのおはぎの包みを僕に渡してくれた。腕の中の猫は、名残惜しそうにこちらを見ていた。
それ以来、勝手口から猫が入ってくることはなくなった。
今ではその女性の家の窓辺で、赤い首輪の茶トラが日向ぼっこをしている。前を通ると、ガラス越しにこちらを見て、ゆっくり目を細めるのだった。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














