「写真だと、もっと肉汁があふれてるじゃない」メニューと料理を見比べた客。だが、責任者から代金を告げられ、言葉に詰まった理由
写真と見比べられたハンバーグ
4か月ほど前の平日、私は昼下がりのファミレスでランチを食べていました。
お昼の混雑が落ち着いた店内は、席にも余裕がありました。
近くのテーブルでは、50代くらいの女性客がハンバーグの皿を前に、メニューの写真と料理を何度も見比べていました。やがて呼び出しベルを押しました。
「ちょっと、これ見てくれる?」
やって来た若い女性店員に、女性客はメニューを見せながら皿を指さしました。
「写真だと、もっと肉汁があふれてるじゃない」
店員が謝ろうとすると、女性客はナイフでハンバーグの断面を示して続けました。
「焼きすぎでパサパサよ。こんなの、お金を取って出すものじゃないわ」
「申し訳ございません。厨房に確認してまいります」
「確認なんていいから、今すぐ作り直してちょうだい!」
声が大きくなり、周りの客も振り向きました。さらに女性客は、こう言ったのです。
「この分は無料にしてよね」
料理への不満を伝えるだけでなく、代金まで払わないつもりなのかと、私は驚きました。
店員は困った表情を浮かべ、厨房へ向かいました。
ソースまでぬぐわれた皿
店員がいなくなると、女性客は「いつまで待たせるのよ」とこぼしながら、目の前のハンバーグを食べ続けました。
ひと切れ、またひと切れ。作り直しを求めていた料理が、少しずつ皿から消えていきます。
私は隣の席が気になり、つい様子を見てしまいました。
しばらくすると、40代くらいの男性の責任者がやって来ました。
女性客の前で頭を下げかけたものの、皿に目をやると、その動きが止まりました。
ハンバーグはひとかけらも残っていません。ソースまできれいにぬぐわれていたのです。
責任者は皿を見つめたあと、落ち着いた声で言いました。
「きれいにお召し上がりいただいたようですので、今回のお代はちょうだいいたします」
「ち、違うのよ。これは、お腹がすいてたから…」
女性客はナイフとフォークを手にしたまま言いよどみました。
通路を挟んだ席にいた男性客が、小さく肩を揺らしているのが見えました。
「では、作り直しはご不要ということでよろしいですね」
女性客は返事をせず、顔を赤くして伝票を手に取りました。そのままレジで会計を済ませ、うつむいて店を出ていきました。
入り口では、先ほどの店員が深く頭を下げていました。
責任者が空の皿を持って厨房へ戻っていくのを見ながら、私はランチの最後のひと口を食べました。
あれほど強く作り直しを求めていた女性客が、結局すべて食べて帰ったことに、思わず小さく笑ってしまいました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














