「ここに荷物を置いてたんですけど」真夏の公園でベンチ2つを場所取りした父親。だが、スタッフの説明に言葉を失った理由
日陰のベンチに置かれた荷物
真夏の暑い日の昼、私は子どもと噴水広場に来ていました。
広場にはパラソルのついたベンチが5つ並び、日陰から子どもの水遊びを見守れる人気の場所です。
私はベンチの端に座り、遊んでいる子どもを目で追っていました。
そこへ、子どもを連れた父親がやってきました。
父親は空いていたベンチのうち2つに、バッグやタオルを広げ始めました。そして、近くにいた人たちに声をかけたのです。
「ここ、あとで使うので。荷物はそのままにしておいてください」
そう言うと、父親は子どもの手を引き、駐車場のほうへ行ってしまいました。
ところが、しばらくたっても戻ってきません。
ほかのベンチもすでに使われていたため、あとから来た家族は荷物の置かれたベンチを見て、困ったように離れていきました。
そんな中、幼い子を抱いた夫婦がやってきました。日陰に空いている場所がなく、パラソルの外で立ち止まっています。
すると、奥さんが私に声をかけてきました。
「すみません。あちらの荷物の方って、戻ってきそうですか?」
「駐車場のほうへ行かれたんですけど、まだ戻っていなくて…」
「そうなんですね。ありがとうございます」
奥さんはそう言って、夫のところへ戻りました。
照り返しの強い石畳の上で、抱っこされた子どもも汗をかいています。
私も、いつまで荷物だけ置いておくつもりなのだろうと、気になっていました。
戻ってきた父親が気づいたこと
しばらくすると、制服姿の公園の管理スタッフが見回りに来ました。
スタッフはベンチに広げられた荷物に気づき、周囲の人に尋ねました。
「すみません。この荷物の持ち主の方はいらっしゃいますか?」
私が駐車場のほうへ行ったきり戻っていないことを伝えると、スタッフはほかの人にも確認しました。
「長い間、置かれたままなんですね。では、いったん事務所でお預かりします」
そう言って荷物をまとめ、管理事務所へ運んでいきました。
空いたベンチには、日なたで待っていた夫婦が腰を下ろしました。奥さんはようやく座れたことに、ほっとした様子でした。
その後、スタッフは再び広場の見回りに戻ってきました。
それから少したって、ようやく父親が戻ってきました。着替えを済ませた子どもの手を引いています。
ところが、自分が荷物を置いた場所に別の家族が座っているのを見て、足を止めました。
「あの、ここに荷物を置いてたんですけど…」
声をかけられた夫婦は、少し戸惑った様子で答えました。
「あ、荷物なら、さっきスタッフの方が運んでいかれましたよ」
「えっ?」
父親は辺りを見回し、近くにいた管理スタッフに気づくと、声を荒らげました。
「私の荷物、どこにやったんですか!?」
スタッフは落ち着いた声で答えました。
「お荷物は管理事務所でお預かりしています。長い時間、荷物だけが置かれていたので、こちらで保管しました」
そして、続けて伝えました。
「ベンチは皆さんで使う場所なので、荷物だけ置いて離れるのはご遠慮ください。お手数ですが、事務所でお受け取りをお願いします」
父親は何か言いかけましたが、結局、言葉が出てこない様子でした。
荷物があったベンチをもう一度見ると、子どもの手を引き、管理事務所のほうへ歩き始めました。
日陰を確保するために置いていった荷物を取りに、今度は自分が日なたの道を歩くことになったのです。
その背中を見送りながら、私は冷たい麦茶をひと口飲みました。
ベンチに座れた夫婦の子どもが、ようやく落ち着いた様子になっていたのが印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














