「帰るよ。ランドセルを持って、早くしなさい」授業参観中に、突如教室を飛び出した母子。だが、追いかけた先生が戻ってきた結果
先生は、教科書を置いて廊下へ出ていきました
娘が小学生のころ、授業参観へ行ったときのことです。
教室の後ろには保護者が並び、前では先生が子どもたちを順番に当てながら授業を進めていました。
その途中、後ろのドアが勢いよく開きました。
入ってきた母親は、そのまま一人の男の子の席へ向かいました。
「帰るよ。ランドセルを持って、早くしなさい」
そう言って息子さんの腕を取り、二人で廊下へ出ていきました。
あまりに突然のことで、教室は静まり返りました。
私にも、なぜ母親が授業の途中で迎えに来たのかは分かりません。何か事情があったのだろうと思いましたが、周囲から見ただけでは判断できないことでした。
先生は教卓に教科書を置くと、子どもたちに落ち着いた声で言いました。
「みんな、今のところをもう一度読んでいてね」
そして、自分も廊下へ出ていきました。
半分開いたドアの向こうから、先生がゆっくり話す声が聞こえました。ただ、何を話しているのかまでは分かりませんでした。
戻ってきた男の子に、先生がかけた言葉
数分ほどして、先生が教室へ戻ってきました。その後ろには、先ほど出ていった母子の姿もありました。
先生は男の子の席を示しながら、いつもと変わらない声で言いました。
「椅子はそのままです、続きから一緒にやりましょう」
男の子は少しうつむきながら、自分の席へ戻りました。
先生は母親にも、
「よかったら、後ろで見ていってください」
と声をかけました。
母親は保護者の列の端に立ちました。周りの人も気にはなっていたと思いますが、声をかけたり事情を尋ねたりする人はいませんでした。
先生も、教室の中で先ほどの出来事を説明することはありませんでした。
「では、続きからいきましょう」
先生が教科書を開くと、子どもたちも少しずついつもの様子に戻っていきました。手を挙げる子がいて、指された子が文章を読みます。
授業が終わるころには、教室には普段どおりの空気が戻っていました。
廊下で先生が母親と何を話したのか、私は今でも知りません。家庭の事情があったのかもしれませんし、その場で気持ちが高ぶっていただけなのかもしれません。
ただ覚えているのは、戻ってきた男の子に先生が理由を尋ねることもなく、いつもどおり座れる場所を示したことです。
事情を知らない周囲が余計なことを言わず、本人が自然に授業へ戻れたこと。その静かな対応が、今でも印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














