「えっ、わざわざ持って帰れってこと?」スーパーで汚れたトレーを回収箱に入れようとした客。だが、袋を渡されて黙った瞬間
肉を移したあと、回収箱へ向けられたトレー
夕方、スーパーで買い物を終え、袋詰めの台に立っていたときのことです。
隣の台の横には、食品トレーや牛乳パックを集めるリサイクル用の回収箱が置かれていました。
私が買ったものを袋に詰めていると、年配の女性客がかごを提げてやってきました。
女性客は肉のパックを取り出すと、ラップをはがし、中の肉だけを備え付けのポリ袋に移し始めました。
肉を取り出したあとのトレーには、赤い汁が残っています。
ところが女性客は、そのトレーを持ったまま、すぐ横の回収箱へ手を伸ばしたのです。
「えっ、そのまま入れるの…?」
思わず目を向けたとき、近くにいた若い店員が女性客に声をかけました。
「お客様、すみません。そちらのトレーは…」
「何?今、入れようとしてるんだけど」
女性客は不満そうに振り向きましたが、トレーを持つ手は下ろしません。
店員が説明しようとすると、女性客は声を大きくしました。
「回収箱があるんだから、ここに入れればいいでしょ?」
「うちのごみ箱に入れると、においがこもるのよ。お店で引き取ってくれればいいじゃない」
確かに、家に持ち帰りたくない気持ちは分からなくもありません。
けれど、回収箱の中には、洗って乾かされた白いトレーが重なっています。
汁が残ったままのトレーを入れられたら困るだろうと、私は気になって仕方がありませんでした。
店員が差し出した小さな袋
店員は落ち着いた声で説明しました。
「申し訳ありません。こちらは、洗って乾かしたトレーを入れていただく回収箱なんです」
「使ったトレーはお持ち帰りをお願いしております」
「えっ、わざわざ持って帰れってこと?」
女性客は納得できない様子です。
すると店員は、回収箱の上に貼られた案内を指さしました。
そこには、トレーを洗って乾かしてから入れる手順が、絵つきで示されていました。
女性客は貼り紙に目を向けると、少しの間、黙っていました。
店員は小さな袋を広げ、女性客から汁のついたトレーを受け取って中に入れました。
そして袋の口をしっかり結び、女性客に差し出したのです。
「こちらに入れましたので、どうぞ」
「……あ、はい」
さっきまで大きな声を出していた女性客は、頬をこわばらせ、目をそらしながら袋を受け取りました。
通路の向こうで袋詰めをしていた客たちも、騒ぎが収まったのを見て、何人かが小さくうなずいていました。
女性客はそれ以上何も言わず、袋を買い物袋の奥へ押し込むと、足早に出口へ向かいました。
店員は台にこぼれた汁をふきんで拭き取り、私と目が合うと、小さく会釈しました。
「お騒がせして、すみませんでした」
「いえ、ありがとうございます。大変でしたね」
私がそう返すと、店員は少しほっとしたように笑いました。
大声で言い返すこともなく、決まりをきちんと説明して対応した店員。
私も家でトレーを洗い、乾かしてから持ってこよう。そう思いながら、買い物袋を持ち上げました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














