「冷蔵庫の渋皮煮、私の得意料理なの」私の手土産を自作と言い、料理もしない子と笑う友人。ご主人の前で伏せた目
出張帰りのご主人と、得意げな友人
食後、友人はご主人に、渋皮煮は自分の得意料理だと答えました
「冷蔵庫の渋皮煮、私の得意料理なの。」
10月の日曜の夜、高校時代の友人の家で、夕食のあとでした。友人のご主人は、けさ出張から戻ったばかりです。
手土産に、私はゆうべ栗の渋皮煮を作り、ガラスのびんに詰めてきました。玄関で渡すと、友人は『冷やしておくね』と台所へ。ご主人はそのとき、飲み物を買いに出ていました。
冷蔵庫をのぞいて席に戻ったご主人が『冷蔵庫の栗、うまそうだな』と言うと、友人はすかさずそう答えました。
友人は、栗の皮むきから全部ひとりでやったと言いました
友人は渋皮煮を白い大皿に盛り、お茶と一緒に食卓へ出しました。
「栗の皮むきから、全部私ひとりよ。」
「ゆうべ、2時間もかかったんだから。」
『すごいな、こんなの作れるんだ』と、ご主人が目を丸くします。友人は『栗は、この子の実家の庭のをもらったの』と付け足しました。ご主人はゆうべ出張先にいたため、友人が本当に料理をしたのか確かめようがありませんでした。
友人は、私は料理なんてしないと言って笑いました
友人が、ちらりと私を見て笑いました。
「この子は料理なんてしないもんね。」
本当は、栗をむいて煮たのは全部私です。でも、ここは友人の家で、私は招かれた客。盛って出したのは友人で、びんは台所の冷蔵庫の中。びんにも大皿にも、私が作ったと分かる印はありません。
友人の目が、余計なことは言わないで、と言っていました。私はひざの上で両手を組み、テーブルの木目に目を落としました。
「ほら、取り皿をこっちに出して」
友人は、取り皿をこっちに出してと私に言いました
友人が、取り分けのスプーンで渋皮煮をすくいました。
「作り方、あなたにも教えてあげる。」
「ほら、取り皿をこっちに出して。」
ご主人も、湯のみを手に、感心した顔で私を見ています。
栗の鬼皮をむく作業で、爪のきわに渋の色が残ることがあります
取り皿に手をのばす代わりに、私は両手をテーブルの上に出しました。手のひらを下にして、指を広げます。親指と人さし指を中心に、爪のきわと指の腹のふちが、こげ茶色です。
「あなたがむいたなら、なぜ私の指が茶色?」
渋皮煮は、栗の固い鬼皮だけをむき、渋皮を残して煮ます。鬼皮をむく作業では、指先に渋の色がつくことがあります。私の場合は洗ってもなかなか落ちず、翌日になってもこげ茶色のままでした。ゆうべ1kgの栗をむいたのは、私です。この色が気恥ずかしくて、ひざの上に手を隠していました。
もちろん、指の色だけで誰が作ったかを証明できるわけではありません。それでも、私が栗の皮をむいたという話には、理由がありました。
友人は、ご主人の前で目を伏せたまま、椅子に腰を落としました
友人の声が、上ずりました。
「栗を洗ったから、その色になったの!」
「洗うだけじゃ、こうならない。」
ご主人は私の指を見て、それから、友人の白い指先を見ました。友人の手に渋の色はありません。ただ、手袋を使えば指が汚れないこともあります。それだけで嘘と決めつけることはできません。
それでも、友人は明らかに動揺していました。私の手元から目をそらし、ご主人と目を合わせようとしません。ご主人も、その様子を不思議そうに見つめていました。
やがて友人は、『……びんごと、持ってきてくれたの』と小さく言い直しました。
友人はスプーンを大皿に置いて椅子に腰を落とし、ご主人の前で目を伏せたまま、顔を上げませんでした。
※本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














