「触ってもない。パンク代と迷惑料1万7千円を払え」預けた自転車に難癖をつける元カレ。最後は肩を落とした男
預けた自転車を取りに来ただけなのに
元カレは階段の上り口をふさぎ、1万7千円を払えと迫りました
十二月の夕方、私は元カレが住むアパートの外階段を上っていました。
一か月前に預けた自転車を、引き取るためです。
別れて半年がたっていましたが、引っ越しで一時的に置き場がなくなった私に、元カレが「駐輪場は空いてる」と言ってくれたのでした。
自転車の予備の鍵も、付き合っていた頃から元カレに預けたままになっていました。
引き取る前に声をかけようと部屋へ向かうと、背の高い元カレが階段の上り口に立ちはだかり、私の行く手をさえぎりました。
「触ってもない。パンク代と迷惑料1万7千円を払え。」
突然の要求に、私は耳を疑いました。
元カレによると、預かっていた自転車がパンクしており、修理には7千円ほどかかるとのこと。
さらに、管理人から他人の自転車を置いていることを注意されたため、迷惑料として1万円を要求するというのです。
しかし、修理はまだしておらず、7千円という金額も元カレが電話で確認しただけの概算でした。
迷惑料についても、元カレが一方的に決めた金額です。
「駐輪場に置いただけだ。」
「パンクは預かる前からだ。」
預けたときの様子を示せず、私は言い返せずにいました
預けた日は、自分で自転車に乗ってアパートまで来ました。タイヤに異常がなかったことは覚えています。
けれど、預けたときの写真は残していません。元カレはさらに一歩近づき、私を見下ろしました。大きな声で責め立てられ、小柄な私は思うように言い返せませんでした。
「お前のは低すぎて、乗る気にもならん。」
「この駐輪場は、俺しか使わない。」
元カレは、預けている間は誰も自転車を使っていないと言い張ります。
私は怖くなりましたが、このままお金を払うわけにはいきません。まずは自転車の状態を確かめようと思いました。
駐輪場で見つけた、元カレの嘘のほころび
階段を下りた駐輪場で見たサドルは、高く上がっていました
私は震える声をしぼり出しました。
「置いただけなら、見せて。」
元カレは一瞬ためらいましたが、私が階段を下り始めると、黙ってついてきました。
建物の裏にある駐輪場へ向かうと、端に私の自転車がありました。
タイヤは空気が抜けており、確かにパンクしているようです。
ところが、私は別の異変に気づきました。
銀色のシートポストが長く伸び、サドルが見たこともない高さに上がっていたのです。
「あのサドルじゃ、足が届かない。」
私は元カレを見ました。預けたときは、自分の身長に合わせてサドルを低く調整していました。
元カレは私よりずっと背が高く、今のサドルは、まるで元カレが乗るために調整したような高さです。
「誰も乗っていないなら、どうしてサドルの高さが変わっているの?」
そう尋ねると、元カレは腕組みをほどき、急に口数が少なくなりました。
元カレは駐輪場で肩を落とし、サドルに手をかけました
元カレは慌てたように自転車へ近づきました。
「最初から高かった!」
そう言い張りますが、私には元の高さがはっきりとわかっています。
「あなたの脚の高さだよね。」
私は元カレに、預けていた予備の鍵をどうしたのか尋ねました。元カレは口を一文字に結び、目をそらしました。
さらに、預けたときにはパンクしていなかったことを伝えると、元カレはしばらく黙り込んでしまいました。
やがて、観念したように事情を話し始めたのです。
「毎朝、駅まで乗ってた。パンクしたのも、帰りに釘を踏んだせいだ。金がなくて、お前のせいにした。」
元カレは、私の自転車を勝手に通勤で使っていたのでした。予備の鍵を持っていたため、自由に乗ることができたのです。
そして、帰宅途中にパンクさせてしまったものの、修理代を負担したくなかった元カレは、私に責任を押しつけようとしていました。
迷惑料の1万円も、修理代に上乗せしてお金を取ろうとしただけだったのです。
「1万7千円は払わない。パンクの修理代はあなたが負担して。サドルも、元の高さに戻して。」
私は静かに伝えました。
元カレは反論することなく、駐輪場にしゃがみ、サドルのレバーをゆるめました。
元の高さに戻すと、ポケットから予備の鍵を取り出し、私に返しました。修理代についても、自分が負担すると約束しました。
私は鍵を受け取り、自転車を押してその場を離れました。
振り返ると、元カレはまだ駐輪場に立っていました。冷えた両手を握りしめ、背中を丸めたまま、肩をがくりと落としていたのでした。
※本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














