「入学式に行けなくて当たり前だろ!」と子供の行事に参加しない夫。だが、運動会の動画一本で言葉を失った
行事にだけ来ない父親
うちの夫は、自分は育児に協力的だと信じきっている。けれど、子どもの行事にだけは、なぜか姿を見せない。
入学式のときも、そうだった。
「平日の入学式に行けなくて当たり前だろ!」
悪びれもせず、そう言ってのけた。
仕事を理由にすれば、すべて免除されると思っている。
だから運動会だけは、と私は早めに動いた。
年間予定が配られた四月に伝え、二週間前にも確認した。
「リレーは十時から。九時に家を出るよ」
「了解」
その返事を、私は信じていた。ところが直前になって、夫の口から出たのは別の言葉だった。
「テニス、自分から誘った手前、断れないんだよ」
「子どものリレーと、どっちが大事なの」
「一回くらい、いいだろ」
当日、夫はあっさり出かけていった。
残された私は、一人で観客席に座った。
アンカーの大逆転
競技が進み、いよいよリレーが始まった。息子は最終走者だ。バトンを待つ姿は、どこか緊張しているように見えた。受け取った時点では、まだ後ろのほうだった。
けれど、ラスト直線で火がついた。
歯を食いしばって、前を走る子を一人、また一人と抜いていく。
「がんばれー!」
そして、トップでゴールテープを切った。周りのお母さんたちも、いっしょになって拍手してくれた。
私はその全部を、スマホで撮り続けていた。
夜、帰宅した夫に、私はその動画を見せた。責める言葉は、あえて一つも添えなかった。
「へえ、勝ったのか。やるじゃん」
のんきな声だった。けれど画面の中で、ゴール直後の息子が観客席を探し、こうつぶやいた。
「パパ、来てないの……?」
言葉に詰まった夜
その瞬間、夫の表情がこわばった。
「……」
言葉が出てこない。動画を止めようと手を伸ばしかけて、やめる。もう一度何か言いかけて、また飲み込んだ。
「俺、何やってたんだ」
ようやく出てきたのは、その一言だった。いつもの「仕方ない」は、どこにもなかった。
「あの子、ずっとパパを探してたんだよ」
私が静かにそう言うと、夫は動画の中の息子から目を逸らせないまま、ただ黙り込んだ。
それからの夫は、人が変わったようだった。次の授業参観の日には自分から有休を取り、前夜のうちに持ち物まで確認していた。
当日は開始前から教室の最前列に陣取り、緊張した面持ちで発表する息子を見守っていた。
「もう絶対、見逃さないから」
子どもに向かって、そう約束していた。何度ぶつけても響かなかった私の言葉より、息子のたった一言のほうが、よほど深く刺さったらしい。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














