「チッ、急いでるんだからいいだろ!!」混雑したレジに割り込んだ客。だが、若い店員の一言で状況が一変
混雑したレジで
休日の昼下がり、駅前のカフェは身動きが取れないほど混んでいた。
レジの列に並んで、もう十分以上は経つ。ようやく自分の番が近づき、私は息をついた。
その矢先、横合いから一人の男性が割り込んできた。
五十代くらいだろうか、悪びれる様子もなく、私の前にぬっと立つ。
「ブレンド、持ち帰りで急いで!」
レジの女性店員へ、いきなり大声で注文を投げつけた。
あまりの堂々ぶりに、私は声も出せず固まってしまう。
「あの、皆さん並んでいるのですが……」
やっとの思いで伝えると、男性はぎろりと振り返った。
「チッ、急いでるんだからいいだろ!!」
店員の毅然とした対応
怒鳴り声に、私はすっかり萎縮してしまった。周囲の客も気まずそうに視線を逸らし、誰も何も言わない。割り込んだ者勝ちなのか。そう諦めかけたときだった。
それまで黙々と接客していた若い女性店員が、顔を上げた。
男性をまっすぐ見据え、落ち着いた声で言い切る。
「お客様、最後尾にお並びください。順番にご案内しております」
声を荒らげるわけでもない。ただ、一歩も引かない響きだった。
「俺は急いでるんだよ。一杯くらいいいだろ」
「ほかのお客様も、お待ちです。お並びいただいた順にご案内します」
彼女は同じ言葉を、表情ひとつ崩さず繰り返した。へりくだりもしない。
その毅然とした態度に、ざわついていた店内が、すっと静まった。
沈黙した男
男性の勢いが、目に見えて鈍った。何か言い返そうと口を開く。けれど言葉が出てこない。睨んでいた目が、決まりわるそうに泳ぎ始めた。
「いや、だから俺は……」
「最後尾にお並びください」
彼女は声色を変えず、短く、もう一度だけ静かに言い切った。
それで、男性の言い分は完全に行き場を失った。
気づけば、列に並ぶ客たちの視線が、いっせいに男性へ集まっていた。
後ろのほうから、こらえきれないような低い声が飛ぶ。
「ちゃんと並べよ」
同調するうなずきが、あちこちで起きた。男性の味方は、もう一人もいなかった。
男性は、ぐっと口を結んだまま、舌打ちを一つ残した。そして肩をすぼめるようにして、のろのろと列の最後尾へ下がっていく。
さっきまで威張り散らしていた人物とは、別人のようだった。
「大変お待たせしました。ご注文をどうぞ」
店員は私に向き直り、にっこりと微笑んだ。あの場で、たった一人で筋を通した。怯えるばかりだった私は、その背中に救われた気がした。
「ホットのカフェラテを、お願いします」
声に出した一杯は、いつもよりずっと、おいしく感じられた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














